『リングフィットRTA』が話題の『RTA in Japan』 “17分間の熱狂”が示した、RTAというサブカルチャーの可能性

 8月11日、『RTA in Japan Summer 2021』が開幕した。

 ゲームから派生したサブカルチャーである「RTA」にフォーカスし、2016年より同分野の発展に寄与してきた『RTA in Japan』。イベント誕生から5周年を目前に控え、開催された今大会は、大きな盛り上がりのなか、8月15日に幕を下ろした。

 『RTA in Japan』とは、いったいどのようなイベントなのか。概要を踏まえ、今大会をめぐる動向へと迫っていく。

国内最大規模のRTAイベント『RTA in Japan』とは

 『RTA in Japan』は、年に2度開催される国内最大規模のRTAイベントだ。「RTA」とは、「Real Time Attack(リアルタイムアタック)」の頭文字をとった略語。ゲームのスタートからクリアまでに要した実時間をカウンターで計測し、そのタイムを競うプレイスタイルを指す。海外では「Speedrun(スピードラン)」の呼称で親しまれている、比較的ポピュラーなサブカルチャーである。

 『RTA in Japan』では、数々のRTAプレイヤーがそれぞれの“持ちゲーム”をリレー形式で代わる代わるプレイしていく。「RTAが好きな人たちの結束を高め、RTAの発展と促進を図るために活動する」という目的どおり、競技性のみにフォーカスしていない点が特徴だ。

 今回開幕した『RTA in Japan Summer 2021』は、2021年の夏開催。半年に一度のお祭りがオンラインで幕を開けた。

ある意味“真のeスポーツ”? トリの『リングフィットRTA』が開催前にトレンド入り

 『RTA in Japan Summer 2021』では、5日間(8月11~15日)の日程で全74タイトルのRTAがおこなわれた。ラインアップの中には、『ポケットモンスター ソード・シールド』や『クラッシュ・バンディクー4 とんでもマルチバース』『聖剣伝説3 TRIALS of MANA』といった直近リリースのビッグタイトルのほか、同カルチャーにおいて定番の種目となりつつある『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』、タイトルとしてはマイナーながら“隠れた名作”や“B級作品”として根強い人気を誇る『デスクリムゾン』『バーニングレンジャー』『俺の料理』などの名が並ぶ。開幕直前には、今大会のトリを務める『リングフィットRTA』がSNSでトレンド入り。RTAという文化の面白さや拡張性にも大きな注目が集まった。

 同種目では、Nintendo Switchの人気タイトル『リングフィット アドベンチャー』のRTAにおいて「28時間22分12秒」の世界記録を持つ「えぬわた」氏が、「Beat World1 Intensity Level 30, Intended(ワールド1のボスを運動強度30、正しい姿勢で撃破するまで)」というルールの下、RTAに挑戦した。「運動強度30」は同タイトルにおける最大の難易度だが、もともと10年以上体操競技に取り組んでいたうえ、フルマラソンへの出場経験もあり、日常的にジムや自宅での筋トレもおこなっている同氏にとっては、それほど高いハードルとはならないのだろう。今大会のタイムスケジュールでこの種目のために割かれていた「30分」を大幅に短縮する「17分00秒」で走破し、イベントのフィナーレを盛り上げた。

 本来の言葉が指すものとは違うが、ゲームで肉体を酷使するという、ある意味で「eスポーツらしい」と言える同種目は、えぬわた氏の挑戦を通じ、RTAの文化そのものや、『RTA in Japan』への注目を越え、幅広い層へとアプローチしたに違いない。その17分間においてRTAは、サブカルチャーとエンターテインメントを両立する、稀有の文化となり得ていた。

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