『ポケモンユナイト』ネットワークテストから見えてきた、MOBAタイトルとしての“長所と短所”
懸念点は、「もちものシステム」と課金要素の“距離の近さ”に
一方で、ほかのMOBAタイトルと比較し、短所となりそうなポイントもあった。『ポケモンユナイト』独自の仕様である「もちものシステム」についてだ。
同仕様は、「ちからのハチマキ」(通常攻撃ダメージが増加する)や、「かいがらのすず」(わざ命中時にHPが回復する)といったバトルが有利になる「もちもの」を、3つまでポケモンに装備させ、持ち込めるシステム。各アイテムはそれぞれレベル30まで強化でき、高くなるほど受ける恩恵が大きくなる。ひとつひとつから得られる効果は、ゲームの勝敗を明確に左右するほどのものではないが、3つすべてが最大レベル/最低レベルのプレイヤー間では、大きな能力差が生まれてしまう。つまり『ポケモンユナイト』では、バトル開始時点から敵との能力に差のある状態での戦いを強いられる可能性があるのだ。
さらに問題なのは、「もちものシステム」が課金要素ともつながっている点である。
「もちもの」をレベルアップするために必要な「もちものきょうかキット」は、トレーナーレベルのアップやバトル報酬でしか手に入れられないが、ショップではゲーム内通貨のひとつである「エオスチケット」を使い、「もちものきょうかキット」を購入できる。この「エオスチケット」もまた、課金では手に入れられないアイテムであるが、上記以外の主な使いみちであるファッションアイテムやホロウェア(スキン)の獲得は、課金通貨のジェムでもおこなえるのだ。
そのため、実質的に課金プレイヤーほど、「もちものきょうかキット」の購入により多くの「エオスチケット」を回せることになる。「『もちもの』にはレベルの上限があり、プレイを続けていれば誰でも最大レベルにできる」とはいえ、課金がバトル開始時の能力差につながる点は、『ポケモンユナイト』の“短所”となり得るだろう。今後バージョンアップを重ねていくなかで、万が一、OP(「過剰性能」を意味するスラング)となる「もちもの」が大量に登場するようなことがあれば、“課金したもの勝ち”の様相はさらに強まっていく。
MOBAにおいて、同様の仕様を持つタイトルを私は知らない。同ジャンルの先駆的タイトルや、『Apex Legends』『Fortnite』などに倣い、根幹のゲーム性とは離れた箇所に課金要素を取り入れられはしなかったのだろうか。“ゲームチェンジャー”となれるタイトルだけに、唯一この点にだけは残念さを感じてしまった。
■結木千尋
ユウキチヒロ。多趣味なフリーライター。
執筆領域は音楽、ゲーム、グルメ、テクノロジーなど。カルチャー系を中心に幅広いジャンルで執筆をおこなう。
人当たりのいい人見知りだが、絶対に信じてもらえないタイプ。Twitter:@yuuki_chihiro