ロレアルやLDHを飛躍させた長瀬次英がTOKYO FMに参画した理由 「音声コンテンツにはエンターテインメントが必要」 

ロレアルやLDHを飛躍させた長瀬次英がTOKYO FMに参画した理由 「音声コンテンツにはエンターテインメントが必要」 

 コロナ禍の影響もあり、ここ1年でPodcastやインターネットラジオそして最近ではClubhouseなどの“音声”を軸としたサービスが増加し、ユーザー数を増やしている。そんな広がりを見せ始めた音声メディアや音声SNSについて、有識者に未来を予想し考察してもらう連載企画「声とテクノロジーで変革する“メディアの未来”」。

 今回は、インスタグラムの日本事業責任者、日本ロレアルやLDHでのCDO(チーフ・デジタル・オフィサー)を経て、昨年開局50周年を迎えた大手FMラジオ局「TOKYO FM」のチーフデジタルプロデューサーに着任した長瀬次英氏に、オーディオコンテンツが注目される背景や音声メディアの未来について話を聞いた。(古田島大介)

時代の変遷とともに企業ブランディングのあり方が変化してきている

 長瀬氏はユニリーバやニュースキン・ジャパンではブランドや商品、店舗等の開発に従事。その後はインスタグラムの日本事業責任者を務め、国内でのビジネススキーム構築に貢献する。さらに、日本ロレアルやLDHではCDOとしてデジタルマーケティングの旗振り役としてブランドの成長を牽引してきた。

 こうした様々なキャリアを歩んできたなかで、長瀬氏は「マスメディア全盛の時代とソーシャルメディア主流の今の時代とでは、ブランディングの考え方が変わってきている」と説明する。

「消費財を扱うメーカーで働いていた時は、ちょうどマスメディアからソーシャルメディアへの移行期でした。今までの消費財におけるマーケティングというと、ブランド認知のためにマスメディア広告を投下し、品質的特長を有した機能的価値を伝えることがセオリーであり、『こういう色々な要素を盛り込んでいるから高い値段なんですよ』という、いわば一方的なメッセージで訴求していたんです。それがSNSが台頭しマスメディア離れが進むと、大勢へリーチするマーケティングのやり方ではブランドの良さが伝わりづらくなった。デジタルが普及したことで、より個の“趣味趣向”を理解し、ブランドの持つ世界観をどう伝えるか考えないといけなくなったわけですね」

1人が感動するブランドを創れば“類友”から伝搬していく

 特に日本ロレアルやLDHでは、デジタルやテクノロジーを活用したビジネス戦略の立案をする上で「ブランドと接点を持つ顧客ユーザーの思考や情報収集の仕方、属しているコミュニティなどの理解を意識していた」という。

「ロレアルは化粧品、LDHはエンターテインメントと、それぞれの領域で業界を牽引してきた企業だからこそ、一本の筋を通してブランドの本質的な部分を見せていくことが求められました。今までのような、一緒くたにしたブランドメッセージを発信しても、ユーザーやファン一人ひとりには伝わりません。潜在的なニーズやインサイトを把握し、ブランドの世界観を構築したり、ネーミングを決めていったりすることで、心に残るブランドへとなっていく。ある映画監督の話で『ヒット映画を生み出すには、1人に向けて作ればいい』というのがあり、要は1人が感動するくらいのストーリーであれば、同じ趣味嗜好を持つ10人の“類友”に自然と口コミし、さらにその類友の先にも10人と、どんどん伝搬していくわけです。このような連鎖を生むためには、『1人が熱狂するサービスやブランド』を作ることが大事になってきます」

音声コンテンツの未来は「UGC」が鍵を握る

 数々の企業を歴任してきた長瀬氏は、2021年からTOKYO FMのチーフデジタルプロデューサーを務めている。

 昨年TOKYO FMは開局50周年を迎え、「ラジオ局からオーディオコンテンツ事業者へシフトする」という新たな指針を掲げた。

 単なるラジオ放送局にとどまらず、日本最大のオーディオコンテンツプラットフォーマーの地位を確立すべく、オーディオコンテンツの拡充を図っているのだ。

オーディオコンテンツプラットフォーム「AuDee(オーディー)」の画面キャプチャ

 なかでも同社が運営するオーディオコンテンツプラットフォーム「AuDee(オーディー)」は、順調に成長しており、2021年4月時点で月間アクティブユーザーは160万人を超える。

 人気ラジオ番組のスピンオフやネット配信に特化したオンデマンドオーディオコンテンツ、広告主企業のブランド価値向上に寄与するブランデッドオーディオコンテンツなど、約600ものオリジナルコンテンツを制作している。

 長瀬氏はAuDeeをグロースさせる上で「オーディオコンテンツ自体を見直すタイミングに差し掛かっており、新たな座組みを作る必要性がある」とし、次のようにオーディオコンテンツプラットフォーム事業の可能性を語った。

「周知のとおり、欧米では近年ポッドキャスト市場が勃興し、それに伴うデジタル音声広告への注目が高まっています。一方でClubhouseやVoicy、stand.fm、spoonなど多種多様な音声コンテンツが溢れているため、特に若年層は『音声コンテンツ=ラジオ』だと考えるかもしれません。改めてラジオって何なのか、あるいはラジオ局の存在意義について突き詰めてみると、プロデューサーや制作スタッフが作る『プロの番組』と、誰でも好きなこと、やりたいことを発信する『アマチュアの番組』が共存すれば面白いんじゃないかと思うようになったんです」

「そこで、まだリリースされていないんですが、AuDeeの中にUGC(User Generated Contents:一般ユーザーが作成するコンテンツ)機能を実装する予定です。一般ユーザーのコンテンツ自体がラジオ局の配信プラットフォームで投稿できるのは画期的で、音声エンターテインメントのまだ見ぬ可能性を見出させればと考えています」

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