遠距離で同じ曲を聴く意義とは? Spotifyの「グループセッション機能」を使ってみた

 Spotifyの、離れた場所から同じ音楽を聴くことができる「グループセッション機能」を知っている、または使ったことがある人は、どれほどいるだろうか。「グループセッション機能」は2020年7月末にリリースされた機能だ。似たようなものにNetflixの「Netflix Party(同じ映画を同時に見る機能)」も思いつくが、このリモート機能に関してはSpotify版もNetflix版も、周りで使っている人を筆者は見かけたことがない。おそらく、リモートでタイミングを合わせて娯楽を楽しむことにあまり面白みを見出だせず、どちらかというと面倒に思ってしまう人が多いのだろう。また、おなじ作品や音楽を楽しめる友達というのは、案外限られているものだ。

 筆者もその一人で、音楽はこれまで基本的に、独りぼっちで楽しむものであった。しかし先日、なかなか作業の終わらない夜更けに、頻繁に好きな曲を教えあっていた音楽好きの友人とたまたま連絡を取り、Spotifyのグループセッション機能を使ってみよう、という話になった。

人に会えない今、自分でもAIでなく他人に選曲してもらうということ

 招待リンクをLINEで送ってもらい、交互に好きな曲をキューに入れていく。相手が曲調を変えてきたら、そのジャンルで自分が好きなものを流してみる。「これ高校生の頃好きだった」とLINEしつつ、懐かしい曲を流す。新しく見つけたアーティストの曲を流すと、向こうから「この人知ってる」とLINEがくる。そうしていると、“確かにリアルタイムで同じことをしている”という安心感に包まれ、段々と「グループセッション機能」の良さがわかってきた。自分のSpotifyが勝手に曲を選択していく様もまた面白いのだ。

 筆者含め、音楽好きでSpotifyを利用している若者には、「Discover Weekly」(ユーザーにオススメの楽曲を、Spotifyの独自システムがまとめたプレイリスト)の選曲に信頼感を抱いている人が多く、最近だとTwitterやYouTubeよりもSpotify内で新しいアーティストを見つけるという人も多い。新しいアーティストの発見を促す、というのはSpotifyにとって長年の目標の一つであり、「Discover Weekly」のリコメンド機能には、“ディープラーニング(深層学習)”というAI技術が活用されている。Spotifyのディスカバープレイリストに関する柴那典氏のコラムによると、自分と趣味が似ているユーザーの聴取履歴などを参考に選曲を行う「協調フィルタリング」に加え、「楽曲のメタデータやオーディオそれ自体を深層学習し、それをもとにリコメンドする仕組み」が、Spotifyのリコメンド機能に採用されているのだという。筆者および筆者の友人は、この高性能なリコメンド機能か、自分が選曲した曲しか聴く機会が無くなっていた。そのため、“人”に選曲してもらうこと、その選曲の意図を聴いてみたり、友人の選曲を楽しみにすることの楽しさに気づかされたのである。

誰とセッションするかが肝

 ただ、セッションを行った友人とも話したことだが、「誰と」セッションするかが非常に重要であることは確かだ。あまり趣向の合わない人とこの機能を利用するのは、やり方のわからないオンラインゲームで対戦するのと大して変わらないように感じる。ジャンルが違っても相手のオススメする曲に興味があれば楽しいだろうが、筆者の場合は、セッションに耐えられそうな相手は、その友人の他に2、3人くらいしか思いつかなかった。

 また、Spotifyのディープラーニング機能の学習意欲はとても強いため、数回しか流したことのない楽曲もよく記憶して、似たジャンルのアーティストや楽曲を「Discover Weekly」に混ぜてくることもある。そのため、「グループセッション機能」で趣味が合わない友人が流した曲を記憶して、Spotifyのパーソナライゼーションが意図しない方向に働いてしまう可能性もあるのだ。

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