初音ミク・星乃一歌が一緒に歌ってくれるーーAI技術駆使した『プロジェクトセカイ・ピアノ』を体験してみた

初音ミク・星乃一歌が一緒に歌ってくれるーーAI技術駆使した『プロジェクトセカイ・ピアノ』を体験してみた

 2021年3月26日から6月27日までの期間、全国のヤマハ楽器店などに、初音ミク・星乃一歌との合奏を可能とする『プロジェクトセカイ・ピアノ』が設置されている。

 『プロジェクトセカイ・ピアノ』は、株式会社セガ、株式会社Colorful Paletteが共同で開発・運営をおこなっているスマートフォン向けリズムゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』とコラボしたAI搭載ピアノ。株式会社ヤマハミュージックジャパンがコロナ禍での人々の生活に再び音楽を取り戻したいという想いのもと2020年10月からスタートさせている企画「おかえり、おんがく。」の一つとして、停滞してしまった“仲間と一緒に演奏を楽しむ”機会を提供する目的で制作された。

「プロジェクトセカイ・ピアノは、VOCALOID技術などを通じて共に音楽文化を作ってきたクリプトン・フューチャー・メディアさんに“AI技術でバーチャル・シンガーとの共演を実現できないか”と声を掛けたところから始まりました。お話する中でプロジェクトセカイの“一緒に歌おう!”というキャッチコピーとマッチしていたことから、セガさん、Colorful Paletteさんからも協力いただいて、プロジェクトセカイ・ピアノができました」と語るのは、ヤマハミュージックジャパン事業企画部の野藤氏。ボカロのアンセム「千本桜」(作詞・作曲:黒うさ)を『プロジェクトセカイ・ピアノ』指定の楽譜通りに演奏すると、その演奏具合をAIがリアルタイムで解析し、調和のとれた合奏・歌唱を予測する「人工知能合奏技術」が機能するようになり、バーチャル・シンガーの初音ミクと、『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』に登場する星乃一歌(CV:野口瑠璃子)が同時に歌ってくれる。

 野藤氏に『プロジェクトセカイ・ピアノ』の簡単な概要を説明してもらってから、実際に『プロジェクトセカイ・ピアノ』を体験してみることに。まずは、幼少期にピアノを習っていたものの、いまでは用がない限りピアノに触れる機会はほとんどなくなり、初心者レベルに戻ってしまっている筆者のピアノレベルを伝えたところ、初心者の方でも安心してくださいとのこと。というのも、楽譜は各々のレベルに合わせて超入門、入門、中級、上級の4種類が用意されているし、楽譜を読めない人、苦手な人でも、鍵盤上部から流れてくる光のランプが、次に弾く鍵盤と打鍵のタイミングをナビゲートしてくれる“ストリームライツ”機能があるからだ。『プロジェクトセカイ・ピアノ』は、“ストリームライツ”機能が搭載されているヤマハ クラビノーバCSPシリーズの本体に『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』をイメージした可愛いラッピングを施したものになっている。

 ぎこちない演奏であるゆえに、初音ミク、星乃一歌が歌ってくれなかったらどうしようと不安を抱えながらも早速、野藤さんにお勧めしてもらった“超入門”に挑戦してみた。白鍵の場所を教えるライトは赤色、黒鍵の場所を教えるライトは青色に光るようだ。鍵盤上部から次々に流れてくるライトを目で追いながら、鍵盤一つひとつを瞬時に押していくのは、リズムゲームをやっているときの感覚に似ていて、ピアノの巧拙は気付けばあまり気にならなくなり、楽しみながら自由に弾くことができていた。ただ、リズムゲームとして考えると難易度は高めだった。ボーカルはAI固有の違和感はなく、ごく自然。ピアノの音色以上に歌声がピアノ本体から湧き上がってくる印象。なにより、タッチをミスしてもゆっくりになっても、初音ミク、星乃一歌が筆者の演奏スピードに合わせながらも止まることなく歌ってくれているため、どこか安心感がある。「超入門は音数が少なくAIの参考にする数値が少ないので、楽譜から外れた演奏をするとAIが反応しにくいのが難点。一方で上級なら音数が多く、普段耳コピなどで演奏される方が少し外れた演奏をしても、ある程度合っていればAI合奏を楽しめます」と野藤氏。

 筆者では再現できないプロ級のレベルは、ピアノ経験者の方にお任せすることになった。メロディと伴奏のどちらも演奏する必要のある上級をテンポを変えながら演奏するバージョン。抑揚に合わせて歌声の強弱、歌のテンポが変化するなど、その時々で歌声の色合いが変容していくところは、まるでコーラスそのもの。続いて、楽譜をベースにしつつ多少のアレンジをプラスした入門のアレンジバージョン。大幅なアレンジではない限り、問題なく歌ってくれた。最後は、極限までゆっくりとしたスピードで弾くバージョン。歌声が演奏をリードしてくれている印象が強くなった。以上のことから『プロジェクトセカイ・ピアノ』は、演奏次第では、よりAIと共鳴し合うことが可能で、ピアノのスキルがない人でも歌声がリードしてくれることから安心してピアノに向き合うことができるのが証明された。ヤマハの公式サイト、動画サイトに公開されているピアニスト・まらしぃ、ピアニスト・作曲家のよみぃによる体験動画からもわかる通り、単純にピアノのスキルを持ち合わせた奏者であれば、なおさらボーカル、ピアノの音色に包まれる中での演奏は山頂に着いたときのような爽快感があることだろう。

「2014年頃から楽器同士のコラボはあった中で、今回は初めてボーカルのあるポップな領域に踏み込みました」という野藤氏の言葉通り、2018年には演奏に合わせてAIが合奏する連弾型のAI搭載ピアノ『Duet with YOO』の体験イベントを期間限定で実施していたヤマハ。『Duet with YOO』にも『プロジェクトセカイ・ピアノ』同様に「人工知能合奏技術」が組み込まれていたが、それはあくまで楽器同士の演奏という領域だった。今後、『プロジェクトセカイ・ピアノ』に似て、多種多様なボーカルが歌ってくれる機能が搭載されたピアノが生まれていくことになれば、ひとりでもひとりじゃない感覚を得られるうえに、楽曲制作などにも役立つかもしれない。『プロジェクトセカイ・ピアノ』は販売はおこなわれず、「おかえり、おんがく。」内ヤマハ『プロジェクトセカイ・ピアノ』特設ページから予約すれば先着順で楽しめる。店舗によってはイヤホンを装着しながらの体験も可能となっているようなので、少しでも気になるボカロ・プロセカファンは、ぜひヤマハ楽器店に足を運んでみてもらいたい。

■小町 碧音
1991年生まれ。歌い手、邦楽ロックを得意とする音楽メインのフリーライター。高校生の頃から気になったアーティストのライブにはよく足を運んでます。『Real Sound』『BASS ON TOP』『UtaTen』などに寄稿。
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