日常系アニメのような面白さ……佐々木未来、伊藤彩沙、愛美の「チームY」がYouTubeで発揮する才能

 佐々木未来、伊藤彩沙、愛美の“チームY”によるYouTubeチャンネル「声優三姉妹【チームY】」。2020年3月のチャンネル開設から1年間が経過し、登録者数は11.1万人を突破(2021年3月10日現在)。最近では、1カ月間の毎日投稿にも挑戦するなど、順調な活動ぶりを見せている。

 もともとは、メディアミックス作品『探偵オペラ ミルキィホームズ』をきっかけに親交を深めたチームY。その名前の由来も、同作の関連番組にて料理対決をした際、共演者の三森すずこ・徳井青空・橘田いずみのチームA(=アダルト)に対して、比較的に年齢層が若い(=ヤング)ことから名付けられたものだ。そのエピソードの時点ですでに面白いのだが、メンバー個人の主張の強いキャラクターも、さすが『ミルキィホームズ』育ちといったところである。

 順に紹介すると、チームYの“お嫁さん”として率先して家事をこなし、食事の際にはいつの間にか日本酒を取り出す飲んべえな佐々木。メンバーから愛される妹(あるいは赤ちゃん)キャラで、スイーツに目がない一方、減量企画の際には“ダイエット警察”に豹変する伊藤。大食い企画で真価を発揮し、牛丼チェーン・松屋をこよなく慕う愛美の3名で構成されるチームY。長年の関係性もあり、伊藤と愛美の“関西コンビ”は素の話し方である関西弁で会話し、常にボケとツッコミが絶えないほか、伊藤は時として、愛美を彼女の旧芸名である「寺川」姓で呼ぶなど、動画内ではいつにも増して彼女たちの自然体を楽しむことができる。

【歌ってみた】夜に駆ける / YOASOBI (covered by 声優三姉妹チームY)

 そんなチームYは、本格的なスタジオ録音環境のもと、YOASOBI「夜に駆ける」を本気で“歌ってみた”動画などで好評を博している……のだが、基本的な活動拠点は、共同生活のために借りている一般的な賃貸住宅の一室。制作する動画は持ち前のタレント力を活かした企画を挟みながらも、大半はいわゆる普通の女の子の“Vlog”に近いものだ。それにしても、彼女たちの生活を切り取った映像は、なぜ11万人もの視聴者から支持されるのだろうか。

 その理由を紐解く上で参考になるのが、彼女たちが今年1月に公開した動画「佐々木家でみころんのお雑煮たべる♡」。同映像ではタイトルの通り、メンバーが佐々木の自宅に招かれ、手作りお雑煮のほか、彼女の出身地・岩手県の郷土料理である“くるみダレ”を振る舞われるというものだ。

佐々木家でみころんのお雑煮たべる♡

 伊藤はさておき、愛美も日常的に料理をするらしいが、佐々木の料理上手ぶりは「太鼓判もの」とのこと。新規層のファンには馴染みが薄いかもしれないが、かつてのキャッチフレーズである“未来、めんこい、嫁に来い”は伊達ではない。そんな彼女をサポートしつつ、残りのメンバーがいつも通りのカップル寸劇を始めたり、愛美がすりこぎを回しながら突如、“くるみ”繋がりでMr.Children「くるみ」を情緒たっぷりに歌い始めたりと、3人のコミカルなトークが終始繰り広げられる動画となっている。

 その極め付けは、チームYの動画ではおなじみの食事パート。これは前述した賃貸住宅でも同じ構図をたびたび見るのだが、3人がTVを眺めながら食事をつつき、ただ談笑する映像が流れ続ける。今回は途中で早回しを挟みながら4分間程度にまとまっているが、この食事パートこそ、彼女たちが多くの支持を受ける理由のひとつ。女性声優が笑顔で会話し、ただ楽しく食事をするだけの映像。これこそ、多くの声優ファンが長年にわたり求めてきた財産なのだ。そこに意味などない。暮らしがあるだけ。奇を衒ったり手の込んだ企画もよいが、いつどんな時も楽しめるのはこうしたシンプルな映像だ。

 また、動画の作り込み方にもポイントが。撮影面では、普段こそ自前の照明とレンタル機材のカメラを使用しているが、前述したお雑煮企画ではスマートフォンを使用。メンバー同士のさらに身近な距離感で撮影模様が届けられる。加えて、基本的な編集は画面下にテロップを入れるにとどめるほか、再生時間が20分程度の長尺であることも、彼女たちらしいVlogテイストを形作っている。

 何より、これまで様々な企画に臨んでいるという認識の上で、やはり求められるのはメンバーの日常に根ざしたお喋り。肩の力を抜き、彼女たちのわちゃわちゃをぼーっと眺める時間には、何にも変えられない安らぎがあり、一人暮らしの食事時などにもちょうどよい長さの再生時間である。こうした動画は一般人でも撮れると思われがちだが、彼女たちのように芸達者でコミカルで、かつ人気声優であるという圧倒的な付加価値を考えれば、そうした指摘もなくなるはずだ。

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