自宅で頑張るあなたへ――声優・悠木碧から広まった、やさしい朗読の輪

 「せいゆうろうどくかい」というハッシュタグが、Twitterを中心に広がっている。

 このハッシュタグは、アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』『ヒーリングっど♥プリキュア』『僕のヒーローアカデミア』などで知られる人気声優・悠木碧の発言から生まれたもの。

 4月7日、悠木はTwitterで「ニュースで、自宅待機をがんばる親子の為に、絵本の読み聞かせを配信している大統領さんがいらっしゃる事をしり、すごくすてきだと思ったので私もチャレンジしてみようと思います」「著作権フリーの青空文庫さんから何か…と思っているんだけどオススメ教えてくれませんか!」と呼び掛けた。

 この発言は、大きな反響を呼ぶことに。ファンからの声はもちろん、梶裕貴、名塚佳織、井上喜久子、高橋李依、竹達彩奈、日高のり子、安元洋貴、山下大輝など、多くの同業者からも賛同の声がリプライとして届けられた。

 そして4月8日、音声データ共有サービス「SoundCloud」にて、悠木は第一弾の朗読を公開。読み上げた作品は、新美南吉の『手袋を買いに』だった。

 悠木自身が子供のころから好きだったとも語る本作は、今なお色褪せない名作文学である。約15分間の音声の中で、悠木が優しいキツネの母や、可愛らしいキツネの子供を、それぞれ個性豊かに演じ分けているのは、さすが第一線で活躍するプロフェッショナルだと唸らされる。

 そして、悠木の動きをきっかけとして、多くの声優が「#せいゆうろうどくかい」というハッシュタグのもとに、著作権フリーとなっている絵本や児童書を読み上げる活動が広まっていったのである。

 ちなみに、悠木の朗読作品のバックで流れるBGMと、音声編集を担当したのは、声優であり自身で楽曲制作を手がけるほどの腕前を持つ小岩井ことり。同じく声優のあきやまかおるは、「せいゆうろうどくかい」の公開がしやすいようフリーのアイコンを制作するなど、様々な形で「せいゆうのろうどくかい」を支えようと動く存在もあった。

豪華声優陣の読み上げる、名作文学に聞き惚れよう

 梶裕貴は、悠木のツイートに「今、自分たちにやれることやってかなくちゃね!」とリプライで話し、YouTubeチャンネルを新たに開設。童話『ももたろう』『ねずみの嫁入り』などの朗読作品を次々アップロードしている。

 杉田智和の朗読したのは、宮沢賢治の『セロ弾きのゴーシュ』。なんと47分にも及ぶ長編大作だ。「他の人達15分くらいなのに長すぎじゃね?でも「ず ぎ だ ざ ん は ゴー ジ ュ!」ってせがまれれば致し方ない」と、彼らしいユーモアのあるツイートが添えられたが、朗読の中身は実に堅実で骨太である。

 今井麻美は、なんとオリジナル作品で参加。そのタイトルは「うんちがでない」。作・画は「アサミンゴス」。実にユニークな発想でファンを楽しませた。(※これは今井麻美のニックネームである)

 声優ユニット「スフィア」の公開した『おおかみと七ひきのこどもやぎ』は、豊崎愛生、高垣彩陽、寿美菜子、戸松遥の4人による合作。なんと、それぞれ自宅収録して完成させたそうだ。

 ネットラジオ『ことはゅ』を担当していた悠木、寿美菜子、早見沙織によるリレー朗読もスタートし、「LE PETIT PRINCE 1」が配信された。こちらは「ことはゅリレー朗読」と言うハッシュタグが使われるという。

 このほかにも、数多くの朗読がアップロードされている。外出自粛の中でも、これだけの作品を生み出すことが出来る「声」の力には、圧倒されるばかりだ。

 この「せいゆうろうどくかい」の広がりを受けて、悠木は自分の思いや注意事項を改めて発信。「皆さんの善意が、多くの人に真っ直ぐ伝わって、温かい気持ちが広がりますように」という、細やかな気配りを見せる悠木のメッセージに、感嘆の声も多く上がった。

 そして、悠木は自身が提唱したハッシュタグも整理。声優が朗読をアップロードする時は「#せいゆうろうどくかい図書館」、感想を呟きたい時は「#せいゆうろうどくかい友の会」というハッシュタグが推奨されている。

 最初こそ親子のために考えられた企画だったが、どれも老若男女が楽しめる物語。子供だけでなく大人にとっても、名作文学をプロの声で味わうチャンスである。

 "秋の夜長"ではないが、今年の春の夜はだいぶ長くなりそうだ。自宅待機のお供に、寝る前の癒しに…。そんな夜に、物語の世界に耳を傾けてみるのはいかがだろうか。

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