Official髭男dism「Universe」ステムプレイヤー公開 テクノロジーが可能にした、音源を“聴く以上”の楽しみ方

ヒゲダン「Universe」ステム企画を紐解く

 現在の音楽の楽しみ方は複数あり、かつてのように音楽を聴く側、つまり、リスナーには単純に音源を再生して聴いて楽しむこと以上の楽しみ方ができる。例えば、TikTokのダンス動画のようなファンの手によって自発的に作成された「UGC(User Generated Contents)動画」は、テクノロジーが可能にした現代的な音楽の楽しみ方の代表例だ。

 そういった自発的にリスナー側が音楽の楽しみ方を開拓する状況だけに、最近では、音楽を提供する側のプロのミュージシャンもリスナーに対して、「どのようにして音楽をただ聴く以上に楽しむことができるのか?」を提示する必要に迫られているようにも感じる。

 そのような状況の中で、ミュージシャン側のひとつの答えとして示されたのが、人気ロックバンド・Official髭男dismが昨年8月に公開した、各トラックのステム(パートごとの音源)をリスナーが思い思いに楽しめるステムプレイヤーだ。

(https://higedan-stemplayer.jp/universe/より)
(Official髭男dism「Universe」Stem Player公開特設サイトより)

 このステムプレイヤーは、音楽制作の現場で使われるDAW(音楽製作ソフト)を模した形になっており、公開当時は、Official髭男dismの「HELLO」と「I LOVE…」の2つの人気曲のステム音源が用意された。特設サイトに設置されたステムプレイヤーでは、例えば、楽曲のギターパートをミュートする、ボーカルパートの音量を上げ下げするといったように、リスナー側が好きにステムデータをいじって、リミックスできるなど、リスナーが自発的に音源をただ、聴く以上に楽しめる仕組みになっていたことが特徴だ。

 そんなステムプレイヤー第2弾がこのほど公開されたわけだが、今回は、今年1月に配信リリースされて以降話題沸騰中の最新曲「Universe」のステムデータを使って、前回と同じように楽しむことができる。

Official髭男dism『Universe』
Official髭男dism『Universe』

 「Universe」の詳細なレビューは、すでにリアルサウンドで公開されている(※1)ため、詳細には割愛させていただくが、イントロからフィーチャーされるピアノ、曲中のホーンが全体的にジャジーな雰囲気を醸し出しつつも、うねるベースや細かなギターのアルペジオ、その跳ねるグルーヴを支えるタイトなリズムを刻むドラムなどが、楽曲の特徴として挙げられる。また、生音だけでなく、そこにシンセサイザーの音色や機械的なカットアップ処理がされたフレーズが加わるなど、生身の人間による演奏とエレクトロニックな要素が交わるアンサンブルによって、モダンなサウンドに昇華されている点も特筆すべきだろう。

 そういったロックナンバーの今様を体現する「Universe」のMVも印象的だ。同MVでは、レコーディングブースで演奏するバンドメンバーの様子がフィーチャーされるが、そのブースの外では、ミキサーのフェーダーや機材のノブを触る少女の姿も確認することができる。これは「Universe」のステムデータが公開された今だからこその気づきではあるが、そのことからOfficial髭男dismは、この曲のステム公開をMVで匂わせていたようにも考察できる。そして、今回、その伏線が回収されたことは、なかなかに遊び心がある演出だと思う(これも昨年のステム公開があってのことだと思うが)。

Official髭男dism - Universe[Official Video]

 ステムプレイヤーの楽しみ方の話だが、基本的には先ほど挙げたように各パートの抜き差しによるリミックス、または楽器プレイヤーであれば、自身の演奏技術向上のための練習や、音楽理論がわかる者であれば、自分で別のフレーズを楽曲再生にあわせて付け加えて高度なリミックスに挑戦するという形でも楽しめるだろう。また、ステムプレイヤーには歌詞表示機能もあるため、ボーカルパートをオフにすれば、自宅でカラオケとしても楽しめる。

 最近では音楽ストリーミングサービスのSpotifyが、スマホアプリ向けに「シンガロング」という機能を公開している。これは「Universe」のステムプレイヤーと同じように再生中の楽曲のボーカル音量を下げることで、カラオケを楽しむことができるというものだ。

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