PS5供給逼迫の原因にも バイデン米大統領、半導体不足に関する調査を指示

バイデン大統領、半導体不足に関する調査を指示

 PS5供給逼迫の原因にもなっている世界的な半導体不足に関して、アメリカのジョー・バイデン大統領が解決への一歩を踏み出した。半導体不足はコロナ禍による生活様式の変化に関係しているのだが、こうしたなかでも大手GPUメーカーは絶好調の決算を発表した。

4つの分野に対して100日間の調査を指示

 アメリカ大手メディアNBCは24日、バイデン大統領が半導体をはじめとした重要製品のサプライチェーンの調査を指示する大統領命令に署名したことを報じた。この命令は、コロナ禍によって生じたマスクや医療品の不足にも対応したものだ。

 調査対象となるサプライチェーンは医療品、レアメタル、半導体、大容量バッテリーの4つで、100日間の調査を通して脆弱性と改善点を洗い出す。さらに国防、公衆衛生、通信技術、エネルギー、輸送、食糧生産の6分野に関しては、1年間にわたる調査が行われる。

 今回の大統領命令の署名に先立つ先週の水曜日(2月17日)、バイデン大統領は半導体不足をはじめとしたサプライチェーンの問題に関して、超党派のミーティングを開催した。こうした超党派のミーティングは、同大統領就任以来、頻繁に開催されている。

 なお、今回の調査は中国との貿易競争を目的としたものではない、とホワイトハウスはコメントしているが、アメリカのサプライチェーンが他国に過度に依存していないかどうかを判断することが目的と見られている。

 以上の大統領命令について報じたゲームメディア『gamesindustry.biz』の25日付の記事によると、アメリカの半導体企業は世界のチップ販売の47%を取り扱っている一方で、同国の半導体生産のシェアは12%であることから、以上の調査以降にはアメリカでの半導体生産が増強されるかも知れない。

半導体不足の原因は2つ

 世界共通の問題のひとつとなっている半導体不足の原因に関しては、ビジネス系メディア『WEDGE Infinity』が1月に特集記事を公開している。その記事でコメントしているイギリスの調査会社オムディアのコンサルティングディレクターである杉山和弘氏によると、半導体不足の原因は2つある。

 1つ目の原因は、コロナ禍による影響である。コロナ禍が長期化するに伴い、テレワークや巣ごもり需要のような新しい生活様式が先進国を中心に定着した。こうした生活にはパソコンやゲーム機といった半導体を使う製品が必須なため、半導体の需要が急増して供給が逼迫した。

 2つめの原因は、米中貿易戦争の影響である。アメリカ政府は半導体を生産する中国企業である中芯国際集成電路製造(SMIC)に対して、経済制裁を行った。その結果、SMICから半導体の供給を受けていた企業は、半導体製造世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)などに発注先を変更した。しかし、発注された企業も急増する需要に応えることができず、半導体不足を招いてしまったのだ。

 半導体不足の解消時期に関しては、杉山氏は「半年から1年はかかり、長引きそうだ」とコメントし、2021年内に解消しない可能性を示唆した。解消が遅れる原因として、半導体の需要が急増した2020年に半導体メーカーは生産体制の増強を行わなかったからだ。増強を行わなかった背景には、2019年の半導体市況が不調だったことがある。

 先月末にTSMCが半導体増産を発表したような明るい材料があるものも、半導体不足の早期解決は難しいようだ。

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