スマホは“巻く”と“折りたたむ”、どちらが使いやすいのか?

スマホは“巻く”と“折りたたむ”、どちらが使いやすいのか?

ユーザーにとって使いやすいのはどちらか

 今後、フォルダブル・ローラブルが普及した場合、どちらがユーザーにとって使いやすいのか。ここでは、両者の使い勝手を考えていきたいと思う。ただしローラブルは、現在コンセプトモデルのみなので、憶測の域を出ないことをご容赦いただきたい。

 フォルダブルのメリットは、「大画面」と「携帯性」の両立にある。

 これまで、こうした需要を満たすためには、「スマホとタブレットの2台持ち」(またはファブレット:スマホとタブレットの中間程度の大きさを持つ端末)しか選択肢がなかったが、フォルダブルの登場により、ひとつにまとめられるようになった。普段はスマホサイズ、動画や電子書籍などを閲覧する際は、タブレットサイズに変えられる点は、かなり使い勝手がいいといえる。

 一方代表的なデメリットとして考えられるのは、「ヒンジの耐久性」や「厚み・重さ」などだ。

 フォルダブルの折りたたむ部分には、ヒンジが存在する。ヒンジとは、扉などに付いている「ちょうつがい」のことだ。普段利用する際に、開閉の動作を繰り返せば、それだけヒンジに負担がかかる。もちろん、液晶にも負担がかかるので、ヒンジ以外の耐久性も気にしなければならない。また、開閉の連続で画面にシワが付くこともあり、見栄えが悪くなる点もデメリットといえるだろう。

 続いて、気になるのは「厚み」だ。一部のフォルダブルは閉じた状態で使うことができる。例えば、「Galaxy Z Fold2」の閉じた際の厚みは13.8mmだ。また「Huawei Mate Xs」の厚みは11mmとなっている。これに対して、iPhone12シリーズは、厚さが7.4mmで統一されている。開いて使う分には問題ないが、閉じた状態で利用する際に、使いづらいと感じることは多いだろう。

 これと同様に、「重さ」に関しての問題もある。「Galaxy Z Fold2」の重さは282g、「Huawei Mate Xs」は300gだ。これに対して、iPhone12シリーズは、Pro MAXが226g、Proが187g、無印が162g、miniが133gとなっている。一般的なスマホに比べると、重量が気になってしまうのも無理はない。(「Galaxy Z Flip」は、183gと健闘している)。

 ローラブルのメリットは、基本的にフォルダブルと同じだ。

 ただし、ローラブルが実用化されれば、フォルダブルをしのぐ人気が出るかもしれない。なぜなら、ローラブルは、フォルダブルのデメリットを克服しているからだ。

 例えば、「ヒンジの耐久性」は、ヒンジ自体が存在しないため問題ない。また、開閉する必要がないので、画面のシワも回避できる。「厚み・重さ」に関しても、LGが発表した「LG Rollable」を例にすると、そこまでなさそうだ。

 加えて、ローラブルの「従来のスマホと同じ形を維持しつつ、動画や電子書籍などを閲覧する際に可変できる」点は大きなメリットといえる。フォルダブルに比べて、一般的なスマホを使っている層が移行する際の障壁が低い。こうした点からフォルダブルのライバルとして十分に機能するといえるだろう。

 一方、デメリットとして考えられるのは、「画面の耐久性」だ。

 ローラブルは、外見こそ一般的なスマホと同じだが、画面が可変する仕様を持っている。このメリットを生かす際の負担はまだまだ未知数だ。フォルダブルのヒンジと同じく、長期的な利用によって、不具合が出る可能性は十分にある。恐らく、保護フィルムなどは使用できないため、常に注意して扱わなければならない。

 結論として、フォルダブル・ローラブルも、どのブランドのスマホを選ぶかによって、使いやすさは変わるだろう。つまり、どちらもメリットは似ており、いかにデメリットを克服した機種を選ぶかが、使い勝手を左右するカギとなる。この点は、各社の企業努力に期待したいところだ。

両者最大の課題は価格

 フォルダブル・ローラブルが普及するまでには、多くの課題がある。特に気になるのは「価格の高さ」だ。

 例えば、auの「Galaxy Z Fold2」は25万9,980円、「Galaxy Z Flip」は、18万5,835円で発売されている。2年で端末を返却することが条件の「かえトクプログラム」を利用した場合でも、前者は15万5,940円、後者は11万1,435円と高額だ。恐らく、ローラブルも近い価格、またはそれ以上で発売されるだろう。他にも、アクセサリや対応アプリの少なさなど、普及までの課題は山積みといえる。

製品価格一覧:https://www.au.com/mobile/product/price/#android-kt

 それでも、高い技術力の証明であるフォルダブル・ローラブルの登場は、市場にいい影響を及ぼしてくれることに間違いはない。それはかつてのガジェット市場が物語っていることだ。

 現在、iPhoneのフォルダブル化もささやかれており、近いうちに決定的なスタンダードを生み出す可能性は高い。もし、発売されれば、これまで以上にフォルダブルの名が世に広がるだろう。アジア市場としては、それまでに定番となる機種を発売したいところだ。

 一方、日本では、2019年にSHARPがフォルダブル用のディスプレイを公開している。またSonyのXperiaシリーズから、フォルダブルが登場する噂もある。しかし現状では、コンセプトモデルすら発表されていないため、一歩遅れを取っている形だ。

 今後、フォルダブル・ローラブルの市場が激化することは必至だろう。その中で、どんなフォルダブル・ローラブルスマホが登場するのか。今年はガジェットマニアにとって、ワクワクする一年になりそうだ。

■菊池リョータ
個性派スマホを愛するライター。ガジェット系を中心に記事を執筆。デザイン性の高いスマホに目がない。

トップ画像:https://www.galaxymobile.jp/galaxy-z-fold2/

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