時代がキズナアイに追いついた 最新技術で“次元を超えるつながり”見せた2ndライブを振り返る

 「メタバース」と呼ばれる、デジタル空間に用意した現実のミラーワールドを使ってバーチャル/リアルを横断する仕組みが現実味を帯びてきていることなどを追い風に、バーチャルタレント/バーチャルアーティストの分野は、さらなる広がりを見せている。中でも増加傾向にあるのが、リアルとバーチャルを組み合わせたXR、もしくはAR的な試みだ。

 たとえば、人気ゲームタイトル『リーグ・オブ・レジェンド』からは、2018年に同作の世界大会で活動をはじめたバーチャルK-POPグループ「K/DA」や、その一部メンバーに新たな面々を加えた「True Damage」といったバーチャルグループが続々と誕生。どちらも現実のメンバーとバーチャルアバターがステージで共演するライブを行なっており、特にK/DAの2018年の登場時は、屋外の巨大会場のステージで現実のメンバー/ダンサーに違和感なく溶け込んでパフォーマンスするバーチャルキャラクターが話題となった。同じくK-POPでは、2020年末にメンバーがリアルとバーチャル双方の姿を持つSMエンターテインメントのaespaなども活動をはじめており、この流れは今後も続いていきそうだ。

 日本でも、昨年12月の『グラブルフェス2020』で、『グランブルーファンタジー』の登場キャラクターがAR演出によってリアル会場に登場して生バンドと共演。VTuber界では、同じく昨年12月に開催されたホロライブの2度目の全体ライブ『hololive 2nd fes. Beyond the Stage Supported By Bushiroad』のラスト曲で、次元を飛び越えてアイドルたちが“こちら側にやってくる”という演出のためにAR技術が使われていたことも記憶に新しい。

 そうしたリアル×バーチャル的な技術の普及に加えて、バーチャルタレント/バーチャルアーティストへの注目もますます増加傾向にある。国内のVTuber人口は2021年に入って1万3000人を越えている他、2020年にはホロライブの様々なメンバーがYouTubeの年間スーパーチャット額の世界ランキング上位を寡占、Twitchなどを含むリアル&バーチャル総合での年間の全女性配信者ランキングでも世界4位にランクインした。エンターテインメント業界の中で、バーチャルの可能性にさらなる期待が集まっているのは間違いない。

 2016年12月に活動をスタートさせたKizuna AI(キズナアイ)は、こうしたすべての出来事に繋がる扉を開いた第一人者でもある。彼女(Kizuna AIはAIのため性別はないが便宜上「彼女」と表現する)の2ndライブ『Kizuna AI 2nd Live “hello, world 2020″』は、前述の『リーグ・オブ・レジェンド』でのK/DAらのパフォーマンスでも使われていたstYpe社の光学式カメラトラッキングシステム「RED SPY」を導入。実写カメラの撮影情報をリアルタイムにトラッキングしで3DCGと合成する最新鋭のシステムによって、Kizuna AIが現実世界に降り立って、バーチャル/リアルの垣根を超える機会となった。

 もともと2020年12月に開催予定だったライブのリベンジ公演とあって、開口一番「2020年13月、今日で終わらせてやる!」と観客に伝えてライブがスタート。特に印象的だったのは、今回のライブならではの次元の越え方が、リアル/バーチャルを横断するコラボレーションによって多角的に表現されていたことだ。このライブでは、「Kizuna AIのソロパフォーマンス」「リアルのバックバンドを加えた編成」「リアルのゲストDJ/トラックメイカーとの共演」「バーチャルシンガーとの共演」「バーチャル/リアルともに多数ゲストを迎えた編成」という5種類のパフォーマンスが用意され、終始賑やかな雰囲気が会場を覆っていた。

 まずは3次元のバックバンドとの共演。開始早々DJやキーボード、ドラムとともに、「future base (Prod. Yunomi)」「the MIRACLE」をパフォーマンスすると、次元を超えてバックバンドのメンバーと揃って手を挙げるなどARライブならではの演出が光る。2019年の1stライブがリアルDJとの共演のみだったことを考えると、約2年間での活動の広がりが感じられる。

 その後は「over the reality (Prod. Avec Avec)」「miracle step (Prod. Nor)」「new world (Prod. Yunomi)」をソロ編成で披露すると、ゲストDJとして「meet you (Prod. DÉ DÉ MOUSE)」を提供したことでも知られるDÉ DÉ MOUSEがバックDJとして登場し、「meet you (Prod. DÉ DÉ MOUSE)」「hello, alone (Prod. MATZ)」「Sky High(Prod. Yunomi)」を披露。TikTokアカウントで振り付けの投票を行なった「Touch Me」も同様の編成で披露した。

 もちろん、リアルだけではなく、バーチャルとのコラボレーションも用意されている。「ラブしい」と「かりそめ」では、原曲でもコラボレーションしていたKAMITSUBAKI STUDIOのバーチャルシンガー、花譜が登場。2人が交互に立ち位置を変えながら歌ったり、スタンドマイクを握ってパフォーマンスをしたりと、次元が同じ2人だからこその瞬間だった。

 以降は「FL-AI-YER」をひとりで披露すると、ステージ奥のDJブースに今度は「melty world」を提供したTeddyLoidが登場。TeddyLoid自身が楽曲制作に携わった「Fireburst」「melty world (Prod. TeddyLoid)」「The Light」で共演。ここでもKizuna AIが後ろを振り返ったりしながら、連携を取りつつライブを盛り上げていく。

 こうしてまとめても分かる通り、今回登場するゲスト陣は、すべてKizuna AIのこれまでの活動の中で出会ってきた人々に声がかけられている。続くMCでは、「ひとりの活動が、みんなで繋がりたいという活動になっていった」と活動の中で芽生えた気持ちを伝え、ソロで「Hello World」「mirai (Prod. ☆Taku Takahashi)」を披露。そして本編最後の「Again」では、リモート環境での人との繋がりなどが表現されたMVと同じように、スクリーンに様々な人々の顔が表示された。