Spotify、念願の韓国上陸も“苦戦”強いられるか 現地在住ライターが分析

 日本でもサービスを開始して約4年半が経過した世界最大手の音楽ストリーミング・サービス、Spotifyが、2月2日に韓国でようやくローンチされた。K-POPの世界的な成功などにより注目の集まる韓国音楽市場において、Spotifyの参入は大きなインパクトとなるだろうか。現地に在住する筆者が、韓国国内企業が運営するストリーミング・サービスが長らく市場で定着していた“韓国独特の事情”も紹介しながら、今後の可能性を展望してみる。

韓国における音楽ストリーミングのこれまで

 「韓国上陸に向け、著作料配分に関連した協議が始まった」という報道が出てから約2年、Spotifyが今月2日にようやく韓国でサービスを開始した。これまで韓国では主に国内企業が運営するサービスが数多く存在し、日本よりもずっと早くストリーミングで音楽を聴く文化が定着していた。最も歴史のあるBugsは2000年に、韓国で最大のシェアを誇るMelonは2004年にサービスをスタートしている。

 ニールセン・コリアン・クリックの調査によると、2020年11月時点での各サービスのシェアは、Melonが34.14%、Genie 23.10%、FLO 16.23%、YouTube Music 14.39%、Vibe 6.90%、Bugs 3.98%、NAVER MUSIC 1.26%の順番で、YouTube Musicを除けば、韓国国内の企業が運営するサービスが市場を占有している。韓国国内勢力からすれば、音楽ストリーミング世界最大手のSpotifyが上陸することは、自分たちが長らく享受してきた“確固たるビジネス”が崩れかねない驚異でもあったのだ。

人気アーティストの音源が確保出来ていない現状

 だが、Spotifyも韓国の音楽ストリーミング市場を席巻する準備ができた状況でサービスをスタートしたわけではない。現時点でSpotifyは韓国国内アーティストの音源確保において大きな問題を抱えており、その最たる例が、昨年韓国で流通した音源のうちの約37%を占有する韓国最大の音源流通社、カカオMとの音源供給の契約を結べていないことだ。該当するアーティストには、12年のキャリアで20曲以上のチャート1位曲を持つ国民的人気歌手のIU、昨年”Any Song”が年間シングル・チャートで1位を記録したZICO、いま韓国で最も人気のあるロック・バンド、Jannabiを始め、MAMAMOO, (G)I-DLE、Apinkなど、日本でも名が知られているグループなども含まれる。

 Spotifyは海外アーティストの音源の充実度では国内ストリーミング勢力より優れている一方、韓国の一般大衆目線で考えると、先述の国内人気アーティストの楽曲が聴けない点はかなり致命的な短所だ。では、なぜカカオMはSpotifyに音源を供給しないのだろうか。この点に関しては、カカオMを傘下にするカカオ・グループが、競合サービスのMelonを運営していることが関係しているという見方が強い。

 また、実はSpotifyより約5年先にApple Musicが韓国に上陸しているのだが、先述の韓国のストリーミング・サービスの市場占有率で名前が出てこなかった通り(2020年11月時点ではシェアはわずか1.26%未満ということだ)市場拡大に失敗している。その理由の一つが、まさしくカカオMとの音源提供契約が結べず、カカオMを通して発表された音源の多くが聴けないために、ユーザーを増やせなかったことなのだ。そのため、Spotifyの韓国上陸を報じた韓国メディアの記事の中には「韓国音楽市場は国内音楽に関する選好度が高く、多様なジャンルを探して聴く少数のマイナーな人でなければ、国内音源プラットフォームで十分に音楽鑑賞が可能なため」と理由を挙げるヘラルド経済*1を始め、カカオMと音源供給の契約を結べていないSpotifyはApple Musicの二の舞を踏んでしまうのか?といった見方を述べたものが多く見られた。