新しいSNSの覇権は“声”が握る ClubhouseやTwitter「Spaces」ヒットの要因と課題
先日、音声ソーシャルネットワークアプリClubhouseは10億ドルの査定額を記録した。2020年3月に数人の友人たちに向けてベータ版をリリースしたばかりの今アプリは既に世界中で200万人のユーザー登録を発表しており、今後はアンドロイド版、一般アクセス版を公開予定だ。
アーティストから科学者、デザイナーなど様々な背景を持つメンバーたちが参加するこのアプリは現在、招待制で招待リンクのみでしか利用できない。Clubhouseはそれぞれがコミュニティを作成するか、好きなチャットルームを見つけそこに出入りし集まったメンバーたちと直接音声会話するという新しい形のつながり方を確立している。世界中から集まるメンバーたちと議論したり自身の体験を語ったり質問したり、ただただ会話するだけ。ツイートやブログ、メッセージとはまた違った形の交流の仕方だ。
なぜいま、音声SNS?
新型コロナウイルスが蔓延し、国境が封鎖され各国で外出禁止令が発表された2020年。同時に世界中でのBLMや外出禁止・自粛の有効性の有無を問うデモ、アメリカ大統領選挙など、人々の間での大きな分断を目の当たりにした一年だった。そんな中、Clubhouseこれらの分断を超えた場所に新しい繋がり方を構築し、文章や動画、写真などとはまた違う人との繋がり方を提供した。
音声はオンライン上において、最も身体性のあるコミュニケーションの形、ということもできるだろう。文章や写真や動画は構成や文体、編集から発信側と受け取り側との間にコミュニケーションの差が生まれる。しかし、Clubhouseなどの音声SNSは直接リアルタイムで相手と繋がれることでコミュニケーションに流動性とより親密な効果をもたらす。これは創設者たちの「Our goal was to build a social experience that felt more human (私たちの目標はより人間的な社会体験を確立することです)」という目標からも理解できる。これは従来のどのSNSとも違っており、アプリへの注目を見ていると人々が相互的なコミュニケーションを求めているのが見て取れる。
TwitterのSpacesや他の音声機能のあるSNSとどう違う?
この音声SNSの注目から、Twitterは先月「Spaces」というベータ版音声SNSをリリースした。この機能は現在、少数のユーザーにしか解禁されていない。ホストがツイートを通してSpacesを開始することで、フォロワー全員に会話プラットフォームを提供することができる。最大10人が同時に喋ることが可能で、会話参加機能として「全員」「フォローしているユーザーのみ」「招待ユーザーのみ」の選択肢がある。同時に文字起こし機能の有無を選択することも可能なので、アクセシビリティも考慮されている。
しかし、Twitterの限界はこれらの機能をフォロワーベースにしているという点にある。一方でClubhouseはアプリ上をぶらぶら歩き回って面白そうだと思った会話に参加することが可能だ。フォロワーや入室にパスワードなどもいらない点では、Zoomなどのオンライン会議サービスとも異なり、必ずしも大きなコミュニティベースが必要ない点ではDiscordとも異なっている。コミュニケーションがどこまでも偶然性に任せられているのだ。