『乃木坂46 LIVE IN 荒野』に見たバーチャルライブの正統進化 “新時代の到来”感じさせた要素を紐解く
そして、今回のバーチャルライブで最も重要な体験だと感じたのは、ステージから配信されるライブ映像に合わせて、3DCGのアバターがパフォーマンスを行ったという点だろう。この部分は、現実世界での映像とバーチャル世界でのアバターの動きがリンクすることで、ミラーワールド的な表現になっており、最先端のエンタメ表現を存分に感じさせた。残念ながら今回の現実世界でのライブ映像は録画されたものだったが、今後、この映像部分がリアルタイムで行われ、そこにアバターが連動するようになれば、今まで以上にバーチャルとリアルが融合する未来的かつイマーシヴなライブ体験が生み出されることになるだろう。
特に昨年後半には、日本でも「MUTEK.JP+MX」のような音楽フェスを始め、音楽シーンのライブイベントでは、リアルとバーチャルでのハイブリッドで開催する形で実施されるケースも見られるようになってきた。そういった場合に例えば、『荒野行動』のようなオープンワールド型のプラットフォーム内で、リアルの世界からリアルタイムで配信される演者のパフォーマンス映像に合わせて動く3DCGのアバターがあれば、イベント会場との物理的な距離を感じずにライブを楽しめるようになるだろう。また、そうなった時に今回のバーチャルライブで示された『荒野行動』が持つゲームの基本機能をベースにしたインタラクティヴ性は、今後、ファンの体験をよりイマーシヴなものへと進化させる大きな礎になるはずだ。
このように振り返ると『乃木坂46 LIVE IN 荒野』は、これまでのバーチャルライブで見られたバーチャルならではの表現やインタラクティヴ性、再現性といった要素をアップデートした体験を得られるものだった。その意味では、まさに2021年の年明けにふさわしい今後のバーチャルライブの可能性を示すものであり、バーチャルとリアルの境界性だけでなく、ゲームと音楽ライブの境界線をも感じさせない新たなエンタメ体験のターニングポイントになるべき取り組みだったと言えるだろう。
■Jun Fukunaga
音楽、映画を中心にフードや生活雑貨まで幅広く執筆する雑食性フリーランスライター。DJと音楽制作も少々。
Twitter:@LadyCitizen69
〈Source〉
https://sensoriumxr.com/articles/sensorium-teams-up-with-mubert-to-create-first-ever-ai-powered-virtual-djs
https://djmag.com/news/world-s-first-ai-djs-playing-ai-music-are-here