『サイバーパンク2077』発売で振り返る、初代PS版『攻殻機動隊』の画期性 

 『サイバーパンク2077』が発売された。おれもしばらくしたら買って遊ぶ予定である。それはいいんだけど、ではおれが今までで一番「サイバーパンクっぽ~~い!!」と思ったゲームはなんだろうか……と考えてみると、これがどうやら初代プレステ版の『攻殻機動隊 Ghost in the Shell』である。

 このゲームが発売されたのは1997年。『タイタニック』が全世界の興行収入のトップになり、日本では『もののけ姫』が公開され、Amazon.comが初めてNASDAQに上場した年である。『攻殻機動隊』の映像作品は押井守監督の劇場アニメのみ。当然おれの家にはインターネットなどというものは影も形もなく、初代プレイステーションはまだまだ最新ハードだった時期だ。

 初代PS版『攻殻機動隊』でひときわ高く評価されているのは、あのオープニングだ。石野卓球が作曲したメインテーマをBGMに巨大な洋館の中をフチコマが駆け回るあの映像は、とにかくかっこよかった。おれがこのゲームをしっかりプレイしたのは発売から数年が経過した高校生の頃だったけど、起動のたびにオープニングを飛ばさずに毎回見ていたゲームは、『攻殻機動隊』くらいである。しかし、大都市を舞台にしたサイバー感ということでいえば、このゲームはオープニング以外にも優れた点がいくつもある。


 例えば、各ステージ前に挟まるブリーフィングでのCGは、押井版攻殻にも出てきたグリーン一色の画面を矢印みたいな図形が移動するアレだ。今となっては信じ難いかもしれないが、当時はアレが本当にめちゃくちゃ未来っぽい上にミリタリー的タクティカル感もあってかっこよかったのである。

 さらに、ステージのロケーションも素晴らしかった。よく晴れたベイエリアの倉庫街をウロつく敵を一掃するところから始まり、下水道にコンビナート、海上を走るボートの上や押井版攻殻を思わせる旧市街、そして大都市のビル街からビルの地下~屋上へと這い上っていくゲーム終盤と、海辺に建造された巨大都市のあらゆるロケーションをプレイヤーはフチコマを操作して走り回る。


 このゲームでのフチコマはLRボタンで左右にスライド、両方押しながら方向キーの前後ボタンで高速での前進後退を行い、さらに左右へのスライド中に逆側の方向キーを押し込むことで目標の周囲をグルグル回ることができる。広大なビル群の壁面に張り付いたり下水道のダクトの中に潜り込んだりするシチュエーションとこの地面を滑るような移動方法とががっちり噛み合い、操作に慣れればまさに人機一体となって暴れまわることができた。

 さらに加えて、初代プレステ版攻殻は唯一「原作コミック準拠で映像化された攻殻機動隊」である。絵柄が全然違う押井版や、それをベースにしたSAC以降の作品とは違い、士郎正宗っぽいキャラが士郎正宗っぽい服装とシチュエーションで喋って動くのである。原作コミック版とそれ以外の攻殻機動隊で異なる点に「テクノロジーの進歩への楽観」「人間がこれまでとは異なる形態で存在することへの楽天的な感覚」があると思うのだが、あのあっけらかんとしたバブリーなノリが映像化されているのはこのゲームだけなのだ。

 以上のような点(他にも色々あるけども)が素晴らしい初代プレステ版『攻殻機動隊』なわけだが、正直なところ今このゲームをやって面白いかどうか、ちょっとおれには自信がない。グラフィックがどうしても見劣りするとか今の攻殻機動隊のノリとはかなり差があるとかそういう理由もなくはないが、一番大きいのは1997年という発売時期と環境がもう戻ってこない点にある。

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