『あざとくて何が悪いの?』から考える、ヒット番組とSNS&ウェブコンテンツの連動

 テレビ朝日系で毎週土曜夜に放送されているバラエティ番組『あざとくて何が悪いの?』。MCの山里亮太、田中みな実、弘中綾香が「あざとい」について語りつくす同番組は、2019年9月、2020年4月、7月の3回の単発番組を経て、今年10月からレギュラー番組化した。

 この「あざとい」という言葉は従来あまりよいイメージを持たれていなかったように感じる。しかし、番組内でも再三語られているように、「あざとい」はいまや周囲を喜ばせることも含めた“処世術”といえる側面も出てきている。あざとさによって、もちろん憎まれ口を叩かれることもあるかもしれないが、賢く可愛げのあるパーソナリティとして認識され、人間関係やコミュニケーションがうまくいくケースもあるのだろう。番組の内容はSNSで議論を呼び、YouTubeでの連動コンテンツもヒットするなど、大きな広がりを生んでいる。

 同番組で特に印象的だったのは、Sexy Zone・中島健人が出演した11月14日の放送回だ。中島から「ジャニーズJr.時代はあざといのエクストリーム」という名言が飛び出した。中島自身、ジュニア時代は「まずジャニーさんから口説き落とした」と語り、ジャニーさんに少しでも見てもらいたくてカバンを忘れたり、振り付け忘れてみたり、メガネをかけないでみたりと、ありとあらゆる手段を使って「YOUどうしたの?」と言われるのを待っていたと話していた。

 このエピソードを中島がデビューするための話と捉えると遠い世界のように感じるが、学生時代、部活でレギュラーに入るためにコーチに積極的にアピールしたり、会社でも上司に気に入られようと奮闘したりした経験がある人は多いのではないだろうか。この番組が提案する「あざとい」は、あくまでもその延長線上なのだ。

 ここでいう「あざとい」のベースはあくまでも「気遣い」。中島は番組のアンケートにて、名前欄の「様」を消去、びっしり書いた回答、最後にはメッセージ付きと社会人の礼儀をわきまえ、かつサービス精神を見せていたと紹介された。実はこの中の「メッセージ付き」というテクニックは、レギュラー放送初回で乃木坂46・山下美月が演じる、あざとい女性のVTR内でも登場したものであった。さらに山下は、仕事終わりの飲み会でもオーダーの際の合いの手、タメ口を駆使し、野球の話題ではマエケン体操まで披露するなどあざといテクニックを存分に披露。しかし、メッセージも飲み会での行動も全て相手を喜ばせるため。「あざとい」と白い目で見られることも厭わず、人を楽しませるための高度な「気遣い」であることを気づかされる。

 このように「あざとくて何が悪いの?」は、一見恋愛だけに応用できると思いがちだが、実は恋愛だけでなく、人間関係全般に応用できるテクニックが満載だ。だからこそ共感を生んでおり、番組名「#あざとくて何が悪いの?」は毎週Twitterでトレンド入りしている。

 11月14日の放送では、番組名「あざとくて何が悪いの?」がトレンド1位に。さらには番組内で上国料萌衣が歌った「LOVE涙色」、ゲストの中島が好きだと話していた「リブニット」もトレンド入りした。また、番組名は放送内容の感想以外にも多数ツイートされており、ハッシュタグはつけなくとも「推し」のあざとい写真、番組とは全く関係ないライブやあざとい瞬間の動画、さらには他局の番組での様子と共にツイートする人も。それだけ、現代の人々が「あざとい」に敏感で、多くの共感を集めていることがわかる。 さらに、ファンに以前からあざといと評されてきたアイドルグループのメンバーや俳優など、「あざとくて何が悪いの?に〇〇を出して欲しい!」という要望のツイートも多い。このようにSNSで盛り上がるテーマ設定は現在、ヒット番組を生み出すポイントの一つになっていると言えそうだ。

 また、昨今で一般的になったYouTubeとの連携コンテンツも豊富で、話題となったアンジュルム・上国料萌衣の“あざとカラオケソング”フルバージョンを2曲とも公開。コメント欄を見ると、元々の上国料のファンは「あざといキャラではないのに、、、」と普段との対比に驚く一方、この番組をきっかけに上国料を知った人はルックスの高さ、歌唱力の高さに驚き、「こんな逸材がいたのか」と驚愕してもいる。トレンド入りも果たし、世間に見つかった上国料のカラオケフルバージョンは、番組の熱狂をさらに盛り上げる要素となった。

 さらに、YouTubeでは毎回ゲスト女優による限定ダンス動画を配信。またMC陣への「収録前直撃!!インタビュー」、ゲスト俳優・女優への「撮影後直撃!!インタビュー」も公開されており、MC陣のスタジオゲストに対するリアルな反応や、ゲスト俳優・女優の本音が楽しめる。

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