バーチャル渋谷が生んだ手応えと課題ーー次の転換点は「ストーリージェネレーター化」にあり?
自由度のあるプラットフォーム リアルとバーチャルの垣根
そうした話の流れを受け、長田は「技術的な部分の発展もありながら、カルチャーが発展するのが渋谷という町の魅力になっている。逆にそういうプラットフォームを引き出す可能性になっているのか」と、各氏に問いかけた。
繁田:例えばアバター制作のプログラムもそうだし、クリエイターがイベントを作ってみるとか、そこに参加する人たちも自由度が上がっていくといい。あとヒトカラのアイデアも出ているが、歌い始めると自分がスキャンされて、バーチャル渋谷にログインして路上で歌ってしまうとか、そうしたコンテンツの発信の仕方が山ほどある。そういったことに近いものだったり、違うものだったり、多くの人たちにとって自由なプラットフォームになっていけば、服を作る人たちが出てくるかもしれない。スキャンしているのでサイズも分かっているから、リアルでアパレル展開していくことも含めて、開かれたプラットフォームを準備することがスゴく大事なんだと思う。
山口:アバターでもデフォルメされてても自分を投影するが、ただ肉体というものを引きずってるなと思う。バーチャルの世界であれば、肉体という概念から解き放たれたりすることができるはず。表現であっても物理的な法則であったり、金銭的な制約であったり、色んなものから開放されてチャレンジできるはず。僕らはリアルのものをバーチャルに持ってきたり、人間の後にAIを持ってきたりするが、僕らの後の世代、若くてクリエイティブに向き合っている人たちはその垣根がない世代だと思っていて、今の渋谷のカルチャーの先に、新しいカルチャーが生まれてきたら面白いと思う。今は過渡期だが、僕らは現実世界で行われているビジネスや経済の流れを、新しい世界に持っていける最後の世代かもしれない。この後も経済の考え方が変わってくると、根底から変わってくる。
加藤:渋谷に価値があるからバーチャルにも価値があるというのが金本位的。その段階ではリアルに引きずられているが、コンバーチブルではなくなる瞬間がくるはず。そうなると資本主義が一気に発達するみたい感じで、リアルとバーチャルでいうと後者の方が発展する。今の世界経済でいうと、バーチャルのビジネスの方が10倍くらいデカい。その本質が金本位制から抜け出しているから、コンバーチブルではなくなった。でもリアルがあるからバーチャルを信用したわけで、金と交換できる。渋谷という町のバーチャルなんだと信じてクリエイティブな作業をした上で、リアルから抜け出してもいいんだと思って初めて、リアルを超えてバーチャルが跳ね上がるのではないか。
KDDIは12月1日、中国のNreal Ltd.(エンリアル)と共同開発したスマートグラス・NrealLightを発売。本カンファレンスの当日は、それに関して情報公開がなされた日でもあった。各氏は終盤、次のように語って来年に期待していた。
繁田:バーチャルハロウィンは日本だけじゃなくて、世界中から来てくれた。インバウンドを含めて厳しい状況の中、集まってくれた人々の期待を大きくしながら、1年後には少しづつでもリアルの渋谷にきてもらって、商店街のみなさんにも喜んでもらいながら、「久々に渋谷に来てみたらスゴいことになってるな」というのを、XR全般を使ってやっていけたらいいと思う。
山口:渋谷にテクノロジーとアイデアを持ち寄って、実験的なことをやっていこうと。常識に縛られない表現やものづくりができる人たちを巻き込んで、その発想はなかったという新しい表現や価値が生まれるようにしたい。今は企画に合わせてXRのグラスやヘッドセットをかけたりしているが、渋谷に来た時には、すでにかけているような状態。未来はそうなっていると信じているので、そうなった時にどういうことができるのかを実験する形ができたらと思う。
加藤:自己発展かな。バーチャルの中で商店を開くことができるとか、コンテンツを作ることができるとかもそうだし、1年後のハロウィンとするなら、本質は仮装なので、仮装ができるようになっていてほしい。今年もアバターを用意すればということもあったが、簡単に仮装ができる状態にはなっていなかった。来年はハロウィンをハロウィンらしく楽しめるようになっていたらいいなと思う。
■真狩祐志
東京国際アニメフェア2010シンポジウム「個人発アニメーションの15年史/相互越境による新たな視点」(企画)、「激変!アニメーション環境 平成30年史+1」(著書)など。
SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA