『メガテン3』が現代に復刻する意義 リマスター版は“原作の輝き”を後世に伝えられるか
「リマスター作品」としては残念な部分も
一方で、今回のHDリマスター版には残念な部分もあった。UIの悪さがプレイヤーの体験を悪くしている点だ。同タイトルには、ゲーム中のさまざまな場面で操作に対する数フレームの遅延があり、これがプレイのテンポを著しく低下させている。
もともとこのHDリマスター版は、「“原作尊重“を前提に開発した」と謳われるタイトルであるため、映像や音楽の質の向上、特定シーンのフルボイス化以外に目立つ変更点はない。原作同様、ダンジョン内での位置の把握には、ボタン操作でマップを開かなければならないし、合体後のスキルの選別には、何度も合体操作を繰り返す必要がある。
もちろん同タイトルは、リメイクではなくリマスターであるので、原作どおりのUIについてはある程度目をつむらなければならない。しかし、操作に対するレスポンスの悪さは、オリジナル版にはなかった“変更点“だ。
2019年9月にリリースされた『FINAL FANTASY VIII Remastered』は、原作に忠実なリマスターながら、一部UIに変更をくわえ、とても快適に遊べるタイトルとなっていた。20年の時を超え、再評価されるに至った同タイトルの価格は、2,547円(税込)である。
『メガテン3』が本来持つ「ゲームとしての面白さ」「“古典”としての文化的価値」を知るためならば、今回のHDリマスター版が発売された意義は大きいが、ひとつの新作としてフルプライスの価値があるかと言われれば、オリジナル版を知るプレイヤーほど疑問に感じるのかもしれない。
「原作への愛情とリスペクトを、より目に見える形で示してほしかった」
『真・女神転生III NOCTURNE HD REMASTER』への評価は、このひとことに尽きるのではないだろうか。
■結木千尋
ユウキチヒロ。多趣味なフリーライター。
執筆領域は音楽、ゲーム、グルメ、テクノロジーなど。カルチャー系を中心に幅広いジャンルで執筆をおこなう。
人当たりのいい人見知りだが、絶対に信じてもらえないタイプ。Twitter:@yuuki_chihiro