LINE MUSIC×TikTokのキーパーソンと考える「2020年以降の音楽シーンとプラットフォームが抱える課題」

LINE MUSIC×TikTok鼎談(後編)

 コロナ禍で音楽業界が大きな打撃を受ける中で、ストリーミングサービスや動画プラットフォームの存在感は日本でもいよいよ大きくなってきている。

 「スマホ発のヒット」が世を賑わせ、瑛人を筆頭にインディペンデントながらもTikTokをきっかけにブレイクを果たすニューカマーが登場しつつある今、この潮流はどこに向かおうとしているのか。

 TikTokのゼネラルマネージャー・佐藤陽一さん、LINE MUSICの取締役COO高橋明彦さんとコンテンツマネージャーの出羽香織さんへの前後編インタビュー。後編では、2020年下半期の予測、そしてTikTok、LINE MUSICそれぞれのプラットフォームとしての取り組みについて語ってもらった。

前編:瑛人・YOASOBIら“スマホ発のヒット”続出の理由は? LINE MUSIC×TikTokのキーパーソンに聞く

「明らかに反響がより速く、より大きくなってきている」(高橋)

――LINE MUSICのランキングは、かなり独特な並びになっていますよね。他のサービスでは出てこないニューカマーやインディペンデントなアーティストの楽曲がいち早く登場してくる印象があります。この理由についてはどう分析されていますか?

出羽:若年層のユーザーがとても多いというのが大きいと思います。20代までのユーザーが約7割というのもあって、TikTokの流行をキャッチするのも早い。それがチャートに入ってくるひとつ目の理由ですね。あとはLINE MUSICのユーザーはランキングから聴く傾向があるんです。流行っている曲を聴きたいというタイプの人が多い。ランキングを入り口に曲をチェックして、自分が気に入った曲をライブラリに入れて聴くというサイクルが多い印象があります。

LINE MUSICコンテンツマネージャー・出羽香織氏

――瑛人さんの「香水」がヒットしたことで、サービスを巡る状況は変わりましたか。

高橋:明らかに反響がより速く、より大きくなってきているのを実感しています。今までとは違うレベルでTikTok経由のヒットが増えてきています。上の世代がわからない流行り方をする曲があるというのは以前もあったんですが、数も多く無かったし、流行が局所的でした。今は明らかに数が増えて、世の中ごとになってきている。瑛人さんが“Mステ”に出たり、YOASOBIが『あさイチ』に出たり、テレビでインディーズのアーティストが取り上げられることも増えてきた。今までにないくらい世の中ごとになってきて、広く注目されるようになってきたように思います。

LINE MUSIC取締役COO・高橋明彦氏

出羽:瑛人さんがMステに出たときに「ヒットを実感したのはいつですか?」と聞かれて「LINE MUSICのランキングの100位以内に入ったのをお母さんが見つけたとき」と言っていたんですね。そういうきっかけとしてLINE MUSICのチャートを認識してくれるのは嬉しかったです。

――瑛人「香水」だけでなく、ここ数ヶ月は、りりあ。「浮気されたけどまだ好きって曲。」、Rin音「snow jam」、Tani Yuuki「Myra」、もさを。「ぎゅっと。」など、昨年まで無名だったアーティストの楽曲がTikTokでのバズをきっかけに、LINE MUSICのランキング上位に次々と入ってくる流れが生まれています。ひとつの突出した例だけではない、新しい状況がムーブメントとして生まれていると思うんですが、そのあたりはどうでしょうか。

出羽:まさにそうですね。かつ、そのサイクルが早くなっていると思います。TikTokでキャッチしてLINE MUSICで聴くという動きができている。レーベルさんからも、新しいアーティストを見つけるためには、TikTokとLINE MUSICから探せと言っていただいています。それはとても嬉しいです。トレンドに敏感な子がTikTokで曲を見つけてLINE MUSICで聴く。そういう循環が新しいスタンダードになってきていると思います。

――こうした今までにないルートで成功を果たすミュージシャンが出てくる傾向に関して、TikTokさんとしてはどう見ていますか?

佐藤:我々の音楽チームが言っていたことなんですが、必ずしも顔出しが必要ではなくなってきていると言うんです。ミュージシャンとして姿を見せることが必須ではなくなりつつある。顔を見せなくても、歌詞や曲の強さでアピールできればチャンスをつかめる。そういう機会が増えてきたのは面白いと思います。

TikTokゼネラルマネージャー・佐藤陽一氏

――たしかに、りりあ。さんやyamaさんはメディアに顔を公開していないですね。

佐藤:みんなが「そんなことあるよね」と共感できるタイプの歌詞もありますし、若干影のある歌詞もありますが、どちらにしても言葉が引き立つ歌の力と楽曲があれば、顔出しがなくても成功する。そういう傾向があるように思います。

高橋:歌詞やリズムという曲の本質的な魅力だけで、自然発生的に世の中ごとになるだけのヒットが生まれる。TikTokさんのメディアパワーがそういう流れを作っていると思いますし、LINE MUSICもその一翼を担っていると思います。

出羽:加えて言うと、TikTokをきっかけにヒットしているアーティストは、メジャーレーベルからデビューしている人よりも、むしろインディーズの人が多いんですね。それこそハンバーガーショップでバイトしていた瑛人さんがすごい再生回数を稼ぐということは、アーティストにとってもチャンスを掴む夢のある話になっていると思います。

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