絵があって、キャラクターがいて、物語だけが欠けていたーー『Dweller's Empty Path』が描く、ある少女の空っぽな1日
魅力的な役者も舞台セットも揃っている。しかし“筋書き”だけが徹底的に本作からは取り除かれている。プレイヤーは、会話の端々や残された日記から出来事の予兆や、痕跡を読み取ることしかできない。本作はある物語と物語の間に挟まれた、前日譚であり後日談である。その空隙をして、本作は『Empty Path』を謳うのだ。雲の合間にぽっかり口を開けた空のようなうららかな平穏。しかし曇ることのない空はないし、いずれ必ず夜はやってくる。この何事もない日々はいつまで続くのか、その儚さを思うヨキの心情こそが本作のテーマである。
穏やかな日常を描きながら、実はその輪郭を辿ることで周囲に迫る影を描きだすことこそが、『Dweller's Empty Path』の主題なのだ。
『Dweller's Empty Path』はitch.ioにて無料/投げ銭制で入手可能となっている。非公式日本語化Modの制作も有志の手で進行しており、現在は80%程度完成しているそうだ。アルファ版も配布されているため、興味がある人は遊んでみるといいだろう。
■Yuki Kurosawa
フリーライター。ゲーム系の記事を中心に執筆している。海外のインディー作品をよく好む。何度も死んで覚えるゲームが得意(一手先が読めないため)。
Twitter:@Yki_Krosawa
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