ニッポン放送に聞く“ラジオ局のPodcastに対する向き合い方” 「最終的にはコンテンツの勝負」
ーーリリースから2カ月ほどが経ちますが、データから分かったことはありましたか?
澤田:まだローンチして間もないので分析できるほどの大量のデータが取れているわけではないんですけど、『飯田浩司のOK! Cozy up!』や『辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!』を聴いてる30〜40代の男性が一番多くアプリを使用していただいていますね。
ーーニュース番組コンテンツが強いんですね。『poddog』は番組に関するタグを付けることができるのも大きな特徴です。
澤田:ラジオ局の課題として、音声コンテンツを聴くまでのハードルが高いなと感じていたんですね。YouTubeはそのハードルを突破するためにサムネイルやタイトルを凝ったりしているので、ラジオも聴く前の段階で、ある程度コンテンツの内容を想起できるものがあるといいなと。それを実現できるようなポッドキャストアプリにしようということで、タグ付けというのを実装させていただきました。
ーー先ほど話にも挙がっていた『霜降り明星のANN0』だったら、カルト的人気コーナーの「ポケひみ」をひたすら繰り返すというクレージーかつ素晴らしい回で、『poddog』で確認してみると「#神回」「#ポケひみ」というタグが付けられているんですよね。
澤田:そうですね(笑)。それをきっかけに何かしらのコンテンツを聴いてくれるのが一番です。
ーーポッドキャストは放送アーカイブが溜まっていくのがradikoとは違った長所でもあって、タグ付けによってずっと後から聴いていった人にもどのような放送内容なのかが分かるのもいいですよね。
澤田:おっしゃる通りでポッドキャストの魅力はアーカイブが全て残っていくところで、貯まっていくとどれを聴けばいいのか迷いどころになってくるので、その選別手段の一つにタグを使っていただければいいなと思っています。
ーーほかに話題になったタグはありますか?
澤田:ニュース番組で言うと、タグでニュースのテーマを付けてくれたりするので、それが話題になって聴くきっかけになることがあります。話題になったタグがついた番組はトップページにピックアップして見やすい位置に載せているんですが、配信者が話題になっているタグを自身の番組に付けて番組コンテンツ自体を上の方に表示させるといった使い方をしていたこともありましたね。うまいなと。
ーー『poddog』ならではですね。アプリの設計上で工夫した部分やデザインはありましたか?
澤田:盛り上がっているタグを上の方にあげて、表示させたことですね。今後は、もっとタグでの遊び方があると思うので、そういった形のUIを考えているところです。
ーータグでの遊び方と言いますと?
澤田:違う番組でも同じタグが付いていたりとか。例えば、有名人のスキャンダルがあったらそのスキャンダルをもとにトークしたりすることがラジオ番組では多くあるので、それに関連するようなタグが付いていたら同じような話題のコンテンツとしてくくってみるとか。番組を横断するような遊び方はあるかなと思います。
ーー澤田さんは、ラジオ局視点から見たポッドキャストの強みはどのようなところにあると考えていますか?
澤田:先ほどおっしゃっていたように、ポッドキャストはアーカイブが残ることがラジオと違ったいいところだと思っています。ラジオというのは一回聴いてもらうだけでは十全にその魅力が伝わらず、繰り返し聴いてもらうことでどっぷりハマっていくメディアだと思っているんですね。ラジオやradikoだとリアルタイムと1週間のタイムフリーまでしか聴けないので、次の回を聴くためには1週間待つ必要がある。ポッドキャストは面白いと思ったら遡って聴くことができて、その足でどっぷり浸かることができる。リスナーになるまでのスピード感がポッドキャストの方が早いのではないかと。そこからさらにラジオリスナーになる構図が作れればいいなと個人的には思っています。
ーーポッドキャストはコンテンツが充実することで、YouTubeへの違法アップロードの抑止にもなるのではないでしょうか?
澤田:YouTubeはプレミアムに入っていないとバックグラウンドで聴けませんが、ポッドキャストは基本バックグラウンドで聴くことができるので、ポッドキャストで聴いてみようという方が増えればいいなと思います。我々もYouTubeにアーカイブを出す取り組みをしたんですが、聴いてくれる時間の長さがポッドキャストと全然違うんですよね。ポッドキャストは全部聴いてくれる人の割合がすごく多い。50分あってもちゃんと50分を聴いてくれる。YouTubeは50分あっても10分しか聴いてくれなかったりで、そういった点はメディアの特性がありますね。だから、有名なYouTuberさんは10分くらいでコンテンツを作っているんじゃないかと思ったりするんですけど。radikoとかポッドキャストの方が、浸かるまでの時間はかかるんですけど、一回ファンになってくれたらなかなか離れにくいメディアだと思いますね。
ーーポッドキャストに配信されている『オールナイトニッポン』シリーズは再編集が施されていますよね。
澤田:ポッドキャストでは音楽が使えないのが一番の課題です。そのために生放送と並行して音楽を入れていないマイクだけの音を録音して、それを再編集してアップロードしているんですね。今後、音楽の権利が変わってくるのだとしたら、ちゃんと放送クオリティのものが上げられたりするのかなとも思うんですけど、それはまだ先の話ですね。
ーーポッドキャスト化されていない『オールナイトニッポン』シリーズに関しては?
澤田:まだこちらの作業が追いついていないだけで、今後は全て配信したいとは思っています。あとは予算的なところですかね。配信するにもお金がかかったりするので、そこをクリアにしていくことですね。僕としてはニッポン放送全番組をポッドキャストでやっちゃえばいいと思っていますけど……(笑)。
ーーデジタル音声広告事業を展開する株式会社オトナルが、『オールナイトニッポン』シリーズのポッドキャストに挿入されるデジタル音声広告の広告枠を販売開始するという動きもあります。
澤田:今後は音声広告の市場規模がどんどん大きくなっていくだろうという見方がされています。ポッドキャストを配信していくだけじゃなく、売っていかないとビジネスとしては成立しない。そんな中で協力させていただいているのがオトナルで、専門的な音の知見も我々としては勉強しながらやらさせていただいています。