『幻想水滸伝』はなぜ愛されるのか 支援額4億円間近の『百英雄伝』クラファン成功を機に分析
『幻想水滸伝』はなぜ愛されるのか
「ありがちな戦記物」「(一部を除いて)オーソドックスなゲームシステム」という、ともすれば凡作と扱われても不思議ではない特徴を持つ『幻想水滸伝』。同作がゲーム史に名を残す名作としていまなお愛され続ける最大の理由には、シナリオの素晴らしさがある。
『幻想水滸伝』のシナリオは、中国四大奇書のひとつ『水滸伝』をモチーフに展開されていく。物語を彩るのは、個性豊かな108人の仲間たちだ。同作に描かれた108人の群像劇は、稀有で魅力的な人間模様を映し出していく。そこに定型的なメロドラマはなく、すべてが等身大で現実的なヒューマンドラマだ。こうしたシリーズの特徴は、ナンバリングをまたいでも色褪せることなく、高い完成度で描かれ続けた。「『幻想水滸伝』と言えば、秀逸なシナリオ」という代名詞で語られるほど、同作にとっては重要なパーソナリティとなっている。
その一方で、『IV』以降の作品では持ち前の個性が影を潜め、想い出のなかでのみ輝く作品群への道を歩んでいくことになってしまった。シリーズ作品の評価から考えても、シナリオの素晴らしさが『幻想水滸伝』の魅力の根幹にあることは明白だろう。
先述したように『百英雄伝』は、『幻想水滸伝III』から地続きのタイトルと捉えられる。私たちの想い出が18年の時を超え、また動き出すのか。2022年10月がいまから待ち遠しくて仕方ない。
■結木千尋
ユウキチヒロ。多趣味なフリーライター。
執筆領域は音楽、ゲーム、グルメ、テクノロジーなど。カルチャー系を中心に幅広いジャンルで執筆をおこなう。
人当たりのいい人見知りだが、絶対に信じてもらえないタイプ。Twitter:@yuuki_chihiro