K-POPの『V LIVE』とジャニーズJr.の『ISLAND TV』、配信アプリの比較で見えてくるもの
(3)アーティストのオリジナル番組
アイドルが地上波に自分たちの冠番組を持つことはなかなか難しい。デビュー2年で既に絶大な人気を誇り、メンバー全員が見事なまでにバラエティ映えするKing&Princeでさえも、未だ自分たちの冠番組を一つも持っていない。韓国でも、アイドルにとってバラエティ番組は自分たちのいろんな側面をアピールできる絶好の機会である。しかし、『Run BTS』(V LIVE内のBTSのオリジナル番組)では、あんなに個性豊かで面白いBTSは、地上波のバラエティ番組には基本出演しない。その代わりに、V LIVEで「半分テレビ、半分YouTuber」のようなオリジナル番組『Run BTS』を毎週火曜日配信している。"自分たちが進行し、自分たちをよく知るスタッフが企画を考えてくれる、自分たちだけのバラエティ番組"である『Run BTS』でしか見ることができない姿がある。そこに気付いて動いたBig Hitのおかげで、韓国国内だけでなく、韓国の地上波バラエティ番組を見ることが難しい海外でも、ペンは彼らの「歌やダンスではない良さ」を知ることが可能になったのだ。
同様に、嵐の人気に急速に火がついた2000年後半、ファンがいわゆる「嵐の仲の良さ」に気づくことができたのは、深夜とはいえ既に冠番組を持っており、ブレイク前夜の頃も、進行者のいない自分たちの深夜番組で、着々と彼ら5人の空気感を形成してこれたことが一つの要因であるように思う。
現在、東京Jr.のいくつかのユニットは『ジャニーズJr.チャンネル』を利用して曜日ごとに動画配信を行っているため、オリジナル番組をわざわざISLAND TV内に別で作る必要はないかもしれない。それに、ISLAND TV内で、Jr.のユニットそれぞれに立派なバラエティ番組を企画するのは規模的に難しいだろう。
だが、ISLAND TVにおける動画コンテンツの種類がより豊富になれば、ファンがアプリ自体に求めることもより明確になるであろう。したがって、今後もISLAND TVで様々な挑戦がなされていくことを期待したい。さらに、ISLAND TVは既に海外からの視聴もできるように設定されている。もしV LIVEのように、各コンテンツを世界中のファンが翻訳したりするシステムが確立できるのなら、Jr.の良さをダイレクトに世界に発信することも可能になるのではないだろうか。
ここまで、V LIVEにあってISLAND TVにはない機能について紹介してきた。しかし、実は、ISLAND TVにあってV LIVEにはない有意義な機能も存在する。それは、「ダウンロード」だ。
ISLAND TVでは、自分のお気に入りの動画を「いいね」することとは別に、「DL(ダウンロード)」することができる。観たい動画を事前にDLしておけば、外出時で携帯の容量を消費したくない時でも動画を見ることができるのだ。見終わったらDLを解除して、別の動画をDLしていけばいいので非常に便利である。
ジャニーズJr.とK-POPアイドル。両者魅力に溢れたアイドルたちである。きちんと彼らに向き合えば、自ずと実感するだろう。ジャニーズには失いたくない"ジャニーズらしさ"があるはずだが、その"ジャニーズらしさ"とは一体何か。一方で、「世界進出」を宣言するにあたって、変化すべき点・価値観は何なのか。既に大勢のスタッフとファンを抱える状態でどう舵を切っていくのか。
これは、設立当初BTSしか所属アーティストの居なかった弱小事務所、Big Hit Entertainmentの、思い切った海外戦略のようにはいかない。さらに言えば、たった数年で上場するほど急成長したBig Hitも、今は沢山のスタッフ、そして世界中に大勢のファンを抱えており、図らずも「攻めの音楽・攻めのアーティストマネージメント」から「守りの音楽・守りのアーティストマネージメント」に転換していく可能性は十分にあるのである。
以上、V LIVEとISLAND TVの比較を行なってきたが、さらなるファンを獲得するにあたって、また海外進出を考えるにあたって、メンバーの個性的なキャラクターや気の緩んだ姿、人間らしい部分までしっかりと(国を超えて)届けることは、アイドルグループにとってとても重要だ。「現代人がSNSを通してアイドルに求める距離感」というのは議論の絶えない話題であることは確かだが、V LIVEは比較的正しい&楽しい距離感を提示できているように思う。ISLAND TVはジャニーズJr.のアプリに過ぎないが、コンテンツを充実させる余地はまだまだある。著者はいつかISLAND TVで、西畑大吾(なにわ男子)が高橋恭平(なにわ男子)にただひたすら“豚キムチ”を作ってあげるだけの1時間くらいの生放送が実施されることを夢見ている。
(画像はPeatixより)
参考文献:https://www.wantedly.com/companies/dip/post_articles/164044