オンラインゲームの終末に新たな価値を 『PSO』シリーズの功績と新作への“引継ぎ”発表から考える

 2020年7月24日、『PHANTASY STAR ONLINE 2(以下、PSO2)』を運営するSEGAから、シリーズの新作にあたる『PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS(以下、PSO2:NGS)』が発表された。『PSO2:NGS』では、なんと現行版『PSO2』のキャラクターをそのまま使用することができるという。今回の発表は、オンラインゲームの終末期に新しい価値を与えるものといえるだろう。

PSOシリーズの功績とオンラインゲームにおける課題

 『PSO』シリーズは、『スターウォーズ』の影響を受けたSFの世界観の上で繰り広げられるアクションRPGだ。初代『PSO』は家庭用ゲーム機向けのオンラインゲームとしては初めて成功を収めた作品ともいわれており、それまで多くの人が持っていた「オンラインゲームはPCで遊ぶもの」という認識を覆した。そのゲームデザインはあの『モンスターハンター』にも多大な影響を与えたといわれており、まさにオンラインコンシューマーゲームの礎となった作品だ。

 しかし、ほとんどのオンラインゲームにはサービス終了という名の「寿命」がある。初代『PSO』はWindows版やゲームキューブ版など複数のハードで展開されていたが、2010年にはすべてのサービスが終了してしまった。その後、シリーズの正当な後継作品となる『PSO2』がリリースされたが、その頃にはオンライン協力プレイができるゲームはもう珍しくなかったし、『PSO』ファンからすれば『PSO2』の世界観やシステムに対して違和感を覚えたのも事実である。その違和感はプレイを重ねることで確信へと変わり、最終的には「これはシリーズの続編ではなくまったく別の作品だ」という結論を出して自分を納得させるに至った。こんな経験は『PSO』シリーズに限らず、オンラインゲームのファンであれば誰もが経験したことがあるのではないだろうか。

キャラクタークリエイトにこだわる『PSO2』だからこそ導き出せた答え

 初代『PSO』との違いを理解し、自分なりに『PSO2』を楽しむことはできた。しかし、やはり頭を過るのは「このゲームにもいつか終わりがくる」という考えだった。『PSO2』はキャラクタークリエイトの機能が非常に優れているゲームだ。簡単な操作で誰でも美しい顔立ちのキャラクターを形成できる敷居の低さと、瞳や鼻、輪郭といった細部まで調整できる玄人向けの機能を併せ持つ。そのため、キャラクタークリエイトだけで何時間も使ったというユーザーは少なくない。そんな愛着のあるキャラクターもゲームのサービスが終了すればただのデータとして処理され、存在を抹消されてしまう。オンラインゲームの末期には、いつもそんな寂しさがあった。しかし、サービス開始8周年を迎える『PSO2』は、そんなユーザー達への救済ともいえる発表を行った。それがシリーズの続編となる『PSO2:NGS』だ。

 『PSO2:NGS』は現行版『PSO2』から1000年後の世界を舞台としたオープンフィールドタイプのアクションRPGだ。『PSO2』と比較するとゲームシステムの変更があるだけでなく、グラフィックエンジンも刷新されており、キャラクターモデリングのクオリティが向上している。しかしながら、『PSO2:NGS』のキャラクタークリエイト機能は、現行版と互換性があるのだ。なにより、これまでに『PSO2』で作成したキャラクターを『PSO2:NGS』でもそのまま使えるという点が画期的だ。

 これは単に次回作にキャラクターの見た目を引き継ぐというものではない。『PSO2:NGS』のサービスが開始されても、『PSO2』のサービスは継続される。つまり、同一のキャラクターを使って二つのゲームの世界を行き来できるのだ。また、今後『PSO2』のグラフィックエンジンも更新され、『PSO2:NGS』で作ったキャラクターを旧作に持ち込むことも可能だ。そのため、キャラクターデータの引継ぎというよりは「共有」という表現が相応しい。これまで使い続けたキャラクターの寿命が格段に延びたうえに美しいグラフィックで生まれ変わり、二作品に跨って遊べるとなればユーザーにとってはいいことずくめだ。これはキャラクタークリエイトにこだわる『PSO2』だからこそ出せた答えといえるのではないだろうか。

 もちろん、『PSO2』と『PSO2:NGS』ではゲームシステムが異なるため、すべての要素を共有できるわけではない。ゲーム内通貨である「メセタ」は引き継げないし、キャラクターのレベルがそのまま新作に反映されるわけでもない。しかし、これまでに取得した武器や防具、マグ(戦闘中にプレイヤーをサポートする小型の機械生命体)は、『PSO2:NGS』に持ち込むことが可能だ。愛着のあるデザインの武器を捨てずに済むのも嬉しいポイントといえるだろう。

関連記事