スマホとの親和が試される『NieR Re[in]carnation』 期待するユーザーほど注意が必要?
その一方で、マップ移動のUIにおいては“残念さ”も存在していた。
『NieR Re[in]carnation』では、タップした箇所を起点にドラッグしてキャラを操作する、ジョイスティック的な移動システムを採用しているが、全方向に移動できる余地を抱えておくには画面中央部に近いところを起点にしなくてはならず、セリフが手指に隠れてしまうケースがあった。タブレットなど、画面の大きい端末でプレイすれば、それほど気にならない点なのかもしれないが、スマホゲームとしてリリースする以上、対象となるすべてのプレイヤーが同じ環境でプレイするわけではない。これについては改善の余地があるはずだ。
また、要求スペックの高さも気になる点である。公式ウェブサイト内に用意されたクローズドβテストのアナウンスページには、「iOS:10.0以上、iPhone7以降の端末」「Android:7.0以上、メモリ(RAM)3GB以上の端末」「推奨Snapdragon 835以上(Xperia XZ1、Galaxy S8)」と、動作環境が記載されている。このなかで注目してほしいのが、最後の「推奨Snapdragon 835以上」という点だ。
私は今回のテストに、約1年前に発売となったミドルエンドの端末(Android:10.0、RAM:4GB)で参加したが、プレイ中ほぼすべての箇所で大幅な処理落ちが発生。“最低”動作環境を満たしているとは言えないプレイ体験となってしまった。ゲーム内には、端末負荷を軽減する画質設定の項目があるが、「標準画質」へと設定を下げても状況は改善されず、とてもプレイに没頭できるようなテストとはならなかったのだ。
もちろんSNS上には、“推奨”動作環境を満たし快適にプレイするユーザーもいたが、私と同様、まともにプレイできなかったユーザーも多数見受けられた。私自身、過去ほかのタイトルでこのような状況となったことはないため、これは『NieR Re[in]carnation』特有の現象だと言える。リリースを楽しみに待つミドルエンド端末ユーザーは注意が必要となるだろう。今後さらに開発が進むなかで、「要求スペックの低下」「さらなる低負荷設定の新設」「“最低”動作環境の引き上げ(ミドルエンドの切り捨て)」などの対応も考えられる。場合によっては、快適にプレイできる端末への買い換えといったプレイヤー側の対応も必要となるかもしれない。
一部のみの体験でありながら、『NieR』シリーズに連なるタイトルであるだけの世界を見せてくれた『NieR Re[in]carnation』。スマホタイトルならではのシステム面の課題を解決し、できるかぎり多くのプレイヤーにその感動を届けてほしいものだ。
■結木千尋
ユウキチヒロ。多趣味なフリーライター。
執筆領域は音楽、ゲーム、グルメ、テクノロジーなど。カルチャー系を中心に幅広いジャンルで執筆をおこなう。
人当たりのいい人見知りだが、絶対に信じてもらえないタイプ。Twitter:@yuuki_chihiro