Apple TV+コンテンツが初エミー賞ノミネート 変わり続ける映像ストリーミング業界の勢力図
年々数多くのストリーミングサービスが登場する今日。この競争の中で常に新しいコンテンツを生産し続けながらクオリティとオーディエンスを保つというのは、なかなかに厳しい戦いだ。
2019年の統計によると、アメリカでは消費者の74%が何らかのストリーミングサービスに登録しており、人口の約半分以上がこれらのサービスでコンテンツを視聴しているという結果が出ている。Netflixを筆頭にメジャーなストリーミングサービスとしてHulu、Disney+、Amazon Prime Video、You Tube TV、HBO Maxなどが挙げられる。他にもインディペンデント映画などを主に扱うMUBI、Fandor、Kanopyなども存在しており、それぞれのジャンルや得意分野を売りにしながら、これらの業界で生き残るための戦略が採られている。新型コロナウイルスの影響で、映画館やテーマパークなどの遊楽施設が閉鎖されるなか、家で気軽に様々なコンテンツを観られるストリーミングサービスは、これを機にさらにマーケットを拡大し伸びていく見込みがある。
Apple TV+の登場
そんななか、たった9ヶ月前の2019年11月にサービス開始となったアップルのストリーミングサービス「Apple TV+」の作品が、今年のエミー賞で18部門への初ノミネートを果たした。これはストリーミングサービス開始1年目の実績としては史上初の快挙である。6本のオリジナルコンテンツ『The Morning Show』 、『Beastie Boys Story』『Defending Jacob』『Central Park』『Home』『The Elephant Queen』が多種に渡る部門にノミネートされている。
エミー賞ノミネート有力作品『The Morning Show』
特にこれらの作品の中でも有力なのが、主演女優賞にもノミネートされているジェニファー・アニストン主演の『The Morning Show』だ。合計8部門にもノミネートされている本作は、アメリカの朝のワイドショーにおける女性司会アレックスをはじめとしたエンタメ業界で活躍する女性たちの物語だ。女性としての職場とプライベートの間での苦難やエンタメ業界における男女差別など現代のテーマ性をうまく組み込んだ作品となっている。主演のジェニファー・アニストンは、すでに今作でSAGアワード(映画俳優組合賞)のドラマ部門における主演女優賞を受賞している。
スパイク・ジョーンズ監督『Beastie Boys Story』
もうひとつの注目作品は、スパイク・ジョーンズ監督の『Beastie Boys Story』だ。今作はマイク・ダイヤモンドとアダム・ホロヴィッツの伝説バンド、ビースティー・ボーイズの40年間にわたる友情関係を語るドキュメンタリーだ。エミー賞ドキュメンタリー&ノンフィクション部門を含め、5部門にノミネートされている。近年はストリーミング会社のオリジナルドキュメンタリーが有力であり、その中でもNetflixなどが独自のオリジナルコンテンツでこの部門での受賞実績を重ねている。その他、今回のエミー賞にノミネートされたApple TV+制作コンテンツ6本のうち半分は、ドキュメンタリー作品となっている。