ついに大手3キャリア出揃った“クラウドゲーミング商戦” 新時代のゲームカルチャーにおける「核」となるか?

“クラウドゲーミング商戦”の現在地

 通信キャリア大手のKDDIは2020年7月21日、NVIDIA Corporationと協業するクラウドゲーミングサービス『GeForce NOW Powered by au』を9月24日からスタートさせると発表した。

 5G時代の新しいゲーミング体験として注目を集める同サービス。今回の発表により、大手3社のサービスがすべて出揃ったことになる。新時代のゲーム体験とは、いったいどのようなものなのだろうか。概要からその可能性を模索する。

『クラウドゲーミング』とは

 クラウドゲーミングとは、クラウド(クラウドコンピューティング)と呼ばれるオンデマンド型のITプラットフォームを活用したゲームのストリーミングサービスだ。サービス提供者はクラウド上にゲームサーバーを構築し、要求に基づいてゲーム映像をユーザーのもとに配信する。それを自宅のモニターやスマートフォンなどで閲覧したユーザーが実際のプレイと同様に操作。再度サーバーへと情報を送り返すことで、擬似的なゲーム体験を可能にするという仕組みだ。これによりユーザーは必要なハードを持たなくてもゲームをプレイできる。同サービスが“新時代のゲーム体験”と言われる所以はこの点にある。

 クラウドゲーミングの歴史は意外と古く、2000年頃にまでさかのぼるが、これまでは世にある通信システムの貧弱さがネックとなり、普及に至らなかった背景がある。しかしながら、近年開発が進む5G通信により、速度や容量、遅延などの問題が解決。同サービスがようやく日の目を浴びることとなった。

 クラウドゲーミングの市場では、KDDIと協業するNVIDIAのほかにも、ソニーやマイクロソフト、Googleなどが覇権を争っていく。国内ではKDDIをはじめとした大手通信キャリア3社がプロバイダーとなっていく予定。今回の発表により、国内3社のサービスがようやく出揃った。

『GeForce NOW Powered by au』はどのようなサービスか

 KDDIの展開する『GeForce NOW Powered by au』は、NVIDIAのクラウドゲーミングサービス『GeForce NOW』の日本版。美しいグラフィックの描写やデータ処理をKDDIのクラウド上でおこない、ストリーミング形式でユーザーのデバイスへと配信するサービスだ。もちろんゲームの描画はクラウド側でおこなわれるため、ユーザー側に通信速度以外のスペックが求められることはない。本来であれば、ゲーミングPCが必要となるようなハイエンドタイトルが、ローエンドの環境でも楽しめる。

 同サービスではすでに、『Fortnite』『Dead by Daylight』『ARK: Survival Evolved』『DEATH STRANDING』をはじめとした、400以上の人気タイトルへの対応が決定している。提供開始日は9月24日となる予定で、価格は月額1,800円。プレイタイトルによって別途ソフトを購入しなければならないケースもあるが、極めて低価格に最高のゲーム体験を享受できるサービスとなっている。

SoftBankは同様のサービスをすでに提供開始

 クラウドゲーミングを巡っては、Softbankも『GeForce NOW Powered by SoftBank』の提供を発表。KDDIに先立ち、2020年6月から正式にサービスを開始している。対応タイトルや価格について両者間に違いはない。SoftBankのクラウドを利用した同様のサービスだと言えそうだ。

 ネット上のレビューでは、
・想像していたような遅延はない
・ダウンロードやインストールの時間がなく、快適
・タイトルラインナップが少ない
・従来のゲーム体験にくらべると、通信状況によって画質が悪くなる

 といった感想が見受けられた。これらを踏まえると、「プレイ環境が自宅にないが、ゲームには触れてみたい人」「据置ハード向けのタイトルを携帯端末でもプレイしたい人」向けのサービスとして、クラウドゲーミングは価値を示していくことになりそうだ。

一方、NTTドコモはオリジナルのサービスで追随

 もうひとつの大手通信キャリアであるNTTドコモは、違う路線でサービスを展開し、KDDI・SoftBankに追随する。同社は2020年3月、『dゲーム』をベースにしたオリジナルのクラウドゲーミングサービス『dゲーム プレイチケット』を発表した。

 同サービスでは先の2社とは違い、期間限定の買い切り型でコンテンツを提供する。長期間プレイするほど、月額課金のモデルよりお得になっていく仕組みだ。

 たとえば、2020年7月現在、対応タイトルへとラインナップされている『FINAL FANTASY XV』は、「3年間で5,478円(税込)」という料金設定となっている。この価格をどう評価するかは、コンテンツの質やユーザーの遊び方次第となるだろう。『dゲーム プレイチケット』の現状の対応タイトル数は、およそ20ほど。『GeForce NOW』以上にラインナップが限定されている状況だ。国内3社のサービスが出揃ったいま、クラウドゲーミングに寄せられる関心は日に日に大きくなっている。

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