はじめてのオモチャは何だった? プレイヤーの記憶が武器になる瞑想アクションADV『Waking』
『Waking』は米国に拠点を置く個人デベロッパー・Jason Oda氏が制作し、パブリッシャーのtinyBuildより先月発売された三人称アクションアドベンチャーだ。PC向けにSteam/GOGで配信しているほか、Xbox One版もリリースされている。
プレイヤーの分身となるのは、昏睡状態に陥り病室で眠る人間だ。その魂は深層心理の精神世界へと迷いこみ、死の使い「ソムヌス」から永遠の眠りへと絶えず誘われている。運命に抗おうとする主人公は、目覚めへ導く声に従い覚醒の世界を目指す。
ランダムで生成される夢の世界では、獣人のような姿をした「死の評議員」や、彼らに生み出された眠りの機械が襲ってくる。プレイヤーは“念動力”を使い、辺りに落ちているドラム缶やトタン板をぶつけることでダメージを与えたり、相手をスタンさせたりすることが可能だ。フィールドに散らばる物体の中にはガラクタの他にも、より大きなダメージを与えられる「知識」や盾にすることで被弾を反射できる「信念」といったオブジェクトが存在する。心象風景を模した幻想的なマップで、心の力を使いこなして立ち回ろう。またボス戦などでは、探索を進めると手に入るアビリティやレリックが強力な武器となる。
これらのアビリティ・レリックが『Waking』の大きな特徴といえる。本作における重要な能力は、プレイヤー自身の記憶にまつわるパーソナルな質問に答えることで獲得できるからだ。「あなたの生まれた家は何色だった?」「育った街でよく通った店の名前は何だった?」などの質問を重ねることで、自分のアビリティが形作られていく。昔飼っていた猫の名前を入力すれば、そのままコンパニオンキャラクター「TAMA」が登場して冒険の手助けをしてくれるのだ。『MOTHER』シリーズの「すきなこんだて」「カッコイイとおもうもの」などのシステムが、より深化したかたちだといってもいい。
筆者は「かつてお気に入りだったオモチャは何?」という質問に窮してしまった。誕生日に与えられたウサギのぬいぐるみだろうか? それともウルトラマンのソフビか? うすぼんやりした思い出がよぎるが、どれも印象が曖昧でピンとこない。しばらく考え込んだのち、雷に打たれたようにある記憶が蘇った。小学生の折、周囲で「バトン」のオモチャの一大ブームが起きていたのだ。いわゆる新体操用のバトンだが、子どもをもてなすため先端には宝石を模したゴムが取り付けられ、濃いピンクと水色のお菓子のような彩りだった。よく魔法使いの杖に見立てて振り回していたものだ。いつの間にやら手元からは消えていた。あれほど手になじんだステッキを、どうして15年来忘れていただろうか。そして、どうして今になってその記憶が蘇ったのだろうか?