【ネタバレあり】『The Last of Us Part 2』に向けられた批判は妥当か? “不快さと誠実さ”併せ持つ問題作について考える

『ラスアス2』の“不快さと誠実さ”

覚悟さえあれば、誰もがこの物語に入ることができる

 最後に、本作の最も偉大な点といえる充実したアクセシビリティについても触れておきたい。Naughty Dogは本作の制作にあたり、様々な障害を抱えるプレイヤーでも本作を楽しめるよう、アクセシビリティ・コンサルタントを起用し、聴覚や視覚をサポートするための様々なオプションを実装している。実際に、全盲のゲームプレイヤーが本作をクリアすることが出来たという事例も存在しており、その試みは成功しているといえるだろう(参考:https://automaton-media.com/articles/newsjp/20200630-129139/)。

 また、もしもゲーム自体に慣れていない人でも、本作は5段階の難易度設定に加え、「匍匐前進中は一切敵に気付かれることがない」など、さらに難易度を下げるようなオプションも充実している。普段ゲームをプレイしない人でも、恐らく本作のエンディングまで辿り着くことができるはずだ。本作は前述の通り、プレイヤーに対して様々な精神的苦痛を強いるゲームだが、それ以外の障壁は極力取り払うように配慮されている。

 『The Last of Us Part 2』が描く物語は、まさにゲームというメディアでしか体験することができないものである。本作を巡るノイズは大きいかもしれないが、その入り口は大きく開かれている。ネタバレの記事や実況動画などで本作の物語に触れている人も多いだろうが、是非、実際にプレイヤーとなって、自分がエリーやアビーに対してどのような感情を抱くのかを味わってほしい。本作は、プレイヤー自身の鏡のようなゲームでもあるのだから。

■ノイ村
92年生まれ。普段は一般企業に務めつつ、主に海外のポップ/ダンスミュージックについてnoteやSNSで発信中。 シーン全体を俯瞰する視点などが評価され、2019年よりライターとしての活動を開始
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Twitter : @neu_mura

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