『ポケモンユナイト』がヒットするための“課題”は？　シリーズ最新作がMOBAであることの意味を考える

『ポケモンユナイト』が抱える課題

　一方で、『ポケモンユナイト』が広く認められるには課題も多くある。

　MOBAにはチーム競技であることに加え、知識が勝敗をわけやすい特徴もある。チーム内のプレイヤー間でゲーム理解にギャップが出ると不和が起こりやすく、罵詈雑言が飛び交うというのが同ジャンルの文化だ。（褒められるわけがなく、看過もできないのだが……。）

　『ポケモン』シリーズがこれまで醸成してきたファンのほとんどはライトゲーマーであり、こうしたMOBA特有の性質に順応し得るとは言い難い。シリーズに惹かれたプレイヤーと、ジャンルに惹かれたプレイヤー（特に他のMOBAを経験済みのプレイヤー）の間で衝突が生まれることはプレイ前から容易に想像ができ、この点が浸透の大きな足かせとなっていくだろう。

　常に仲間内でプレイする分にはさほど問題がないのかもしれないが、1チーム5人となればそういうわけにもいかない。ゲーム内の秩序に対し、開発側がどれだけ配慮できるのかが『ポケモンユナイト』の評価を大きく左右していく可能性がある。

　また、シリーズの特性上、好きなポケモンを使い続けて楽しむプレイヤーも出てくることが予測されるが、ここにも落とし穴がある。

　MOBAでは対策を含んだキャラ選択をするケース（たとえば、相手チームのリザードン選択を見て、弱点をつけるカメックスを選ぶなど）が多く、常に好きなキャラを使い続けての勝利が難しい。個人競技であれば、自分が納得しさえすれば問題のないプレイスタイルだが、同ジャンルでは相手チームまで含んだ他の9人の勝敗に影響してしまう。

　先述のMOBAの文化を踏まえると、こうしたプレイスタイルが衝突の引き金となる場合もある。シリーズに対するファンの愛と決して相性がよいとは言えないジャンルであるため、この点にも開発側の配慮が必要となるだろう。

　課題は多いものの、ビッグタイトルとなる可能性も秘めている『ポケモンユナイト』。現在鋭意開発中とされており、リリース時期は未定となっている。

　本作は“MOBA後進国”の日本に一石を投じられるのか。今後の展開に注目していきたい。

■結木千尋
ユウキチヒロ。多趣味なフリーライター。
執筆領域は音楽、ゲーム、グルメ、テクノロジーなど。カルチャー系を中心に幅広いジャンルで執筆をおこなう。
人当たりのいい人見知りだが、絶対に信じてもらえないタイプ。Twitter：@yuuki_chihiro