温厚な羊はSwitch版『RUINER』を経て、いかにサディズムを手に入れるか

Switch版『RUINER』とサディズム

 ビデオゲームパブリッシャーのDevolver Digitalは、サイバーパンクアクション『RUINER』のNintendo Switch版を配信開始した。本作はポーランドのデベロッパーReikon Gamesが2017年よりSteamにて配信している作品だ。

 ふだんアクションシューティングを遊ばない層にとっても、本作を構成する要素は魅力的に映るだろう。赤と黒でまとめられたスタイリッシュなデザイン。日本アニメへのリスペクトも感じられるビジュアル。そして国内アーティスト・平沢進氏も提供するハイクオリティーなサウンド。こうした数々のネオン看板に誘われて『RUINER』を手にとったプレイヤーのうち、少なくない人数は思わず戸惑ってしまっただろう。本作は遊ぶ者の精神に、“加虐性”の素地を求めるからだ。

 本作の舞台となるのは、2091年のメトロポリス「レンゴクシティ」。腐敗したシステムが牛耳るこの都市で、巨大企業に兄をさらわれたひとりの男が主人公だ。ミステリアスな女性ハッカーを味方につけ、鉄パイプを握りしめた覆面男の復讐劇が始まる。ストーリーから匂い立つダークな気配もさることながら、そのゲーム性も過酷なデザインだ。

 本作は基本的に、ウェーブ状に襲ってくる敵の攻撃をかい潜りながら相手を一掃していく形式となっている。最初こそ近接武器を振り回していればなぎ倒せるようなチンピラばかりだが、やがて登場する敵もグレードアップ。バリアを張るサイボーグ兵士にダッシュで距離を詰められ、あっという間にグレネードで焼かれてしまう。乱戦の中で素早く銃器を切り替えながら立ち回るコンバットスキルがなければ、本作をクリアすることは難しいだろう。このように、表面のポップカルチャー的な文脈だけから流入してきたユーザーにとっては、なかなか歯応えのある難易度となっているのが『RUINER』の特徴だ。

 さりとて案ずることはない。Nintendo Switchに降り立ったこのソフトは、しごく丁寧に温厚なプレイヤーの手を取って、渦巻く暴力の道へと誘ってくれるからだ。

 シューターに不慣れな場合の一助となるのが、多彩なアビリティの数々。作中ではいつでもスキルポイントを割り振ることで、エネルギーシールドやキネティックバリアといった最新鋭テクノロジーを援用することができる。「敵をハッキングして撹乱する」といった上級者向けの特殊能力もあるが、初心者は体力持続回復やダッシュ能力を強化するといいだろう。適切なアビリティ強化を怠らなければ、散々手こずらされていた雑魚の群れをきれいに一掃できるはずだ。考えた戦術とアビリティがハマり、圧倒的な戦力で大量の屍を築き上げたとき、バイオレンスゲームに親しんだことがなくとも、不思議な快感と背徳感を覚えることだろう。

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