温厚な羊はSwitch版『RUINER』を経て、いかにサディズムを手に入れるか

Switch版『RUINER』とサディズム

 また、本作は演出面でもプレイヤーの攻撃性をかき立てるデザインとなっている。ゲームのチュートリアルは、謎の敵に主人公がマインドハックされる場面から始まり、基本操作を覚えつつも「言いなりにさせられる」という、フラストレーションが溜まるシナリオだ。敵の支配下から逃れた第1章からが本番で、主人公を操っていた小男をいかに追い詰めるかが主目的となる。このように、自然と最初の敵への加虐心が刺激される構成になっているのだ。

 ネタバレは避けるが、このほかにもストーリーを進めると、「特に意味もなく同行者を虐待するためのボタン」が登場したり、「あるタイプの敵」ばかりが出るステージでやたらと火炎放射器がドロップしたりと、明らかに余剰と思える暴力的な要素が多数登場する。サイバーパンク的な世界観といえば、人間性の抑圧はつきもの。しかし『RUINER』はゲーム性と絡めながら、さまざまなかたちで人権を貶め、感情を揺さぶる演出において抜きん出ている。

 コアなシューターにとってはもちろんのこと、本作のサブカルチャー的な側面に惹かれた初心者でさえも『RUINER』は両手を広げて歓迎するだろう。多彩なアビリティによる幅広い難易度設計や、プレイ体験と絡めた演出の数々が、身をもって倫理観が麻痺してしまう過程を味わうことができる。それは、ボタンを通じてバーチャルに「手を汚す」体験を与える、ゲームならではのストーリーテリングといえるだろう。

■Yuki Kurosawa
フリーライター。ゲーム系の記事を中心に執筆している。海外のインディー作品をよく好む。何度も死んで覚えるゲームが得意(一手先が読めないため)。
Twitter:@Yki_Krosawa
サイト : https://yuki-writer.com

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