tofubeats&DJ Qと考える、コロナ禍における“リモートプロダクション”の今とこれから

tofubeats&DJ Qと考える、コロナ禍における“リモートプロダクション”の今とこれから

 世界中のプロデューサー・シンガーがリモートワークで繋がり、1曲を制作するという、レッドブルの動画番組企画『Red Bull Check Your DMs』が配信された。現在は、日本を拠点に活動するtofubeatsと、イギリスが拠点のベースミュージック・プロデューサーのDJ Q、オランダのシンガーGaidaaによるコラボレーションに密着した第一回を見ることができる。

tofubeats、『Red Bull Check Your DMs』出演 イギリス&オランダのクリエイターとコラボ楽曲制作 

 当初、同企画は、離れた活動拠点に身を置きながら、お互いがリモートでコラボレーションする、デジタル時代のアーティストの創作活動や考え方を追った動画番組として、始まる予定だった。しかし、改めて今の状況を踏まえて動画を見てみると、全く新しい価値観を読み取れないだろうか。リモートワークで創作環境をどう確保するかーーこれはつまり、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、オフィスや作業現場が閉鎖された、日本の音楽・エンタテインメント業界の現状と重なるのだ。コロナ禍の中、リモートワークや新しい生活様式への移行は、日本人である我々にとって、もはや無視できない。新しい日常を考えるとすれば、この企画は、音楽制作という枠を越え、状況に適応しつつ、価値観や考え方を一変させることの重要性を、我々に伝えようとしているのではないだろうか。

 今回リアルサウンドでは、日本のtofubeatsと、イギリスのDJ QをZoomで繋ぎ、コロナ禍における音楽活動の変化や、リモートプロダクションの「今」と「これから」についての考え方を語り合ってもらった。(5月11日取材/ジェイ・コウガミ)

「リモートでも化学反応は起こせるよ」

ーー今回レッドブルの新企画『Red Bull Check Your DMs』では、国や活動拠点に関係なく、お互い会ったことのないアーティスト同士のコラボレーションがテーマになっていますが、どのような形から始まったのでしょうか?

DJ Q:『Red Bull Check Your DMs』のプランを打診されて、プロデューサーを探している時、tofubeatsを候補に出したんだ。僕のマネージャーのElijah(UKグライムのレーベル・Butterz代表のElijah & Skillam)が元々、彼のマネージャーと繋がっていて、僕たちのデモ音源を交換していたから、tofubeatsのことはよく知っていた。彼のチームに連絡したら、快く了承してもらえて、早く決まったね。

tofubeats:UKのレッドブルに企画を頂く以前から、僕のマネージャーや友人が、イギリスのElijah & Skillamと友人でして。ありがたいことに、僕のデモ音源をElijahに渡してくれていたんですよ。

 あと、以前から僕がDJ Qのファンで。実は前にDJ Qの限定バンドルUSBをBandcampで買って、ずっと持っていたんです。それをプロモ用の動画撮影の時に紹介しようと思って、当日スタジオへ持っていったんですけど……撮ってもらうのを忘れるという(笑)。

ーー新型コロナウイルスによって、制作活動には、どのような影響がありましたか? 

DJ Q: 自分は今、ロンドンの北にあるハダーズフィールドに住んでいる。イギリス政府のロックダウン(都市封鎖)で、あらゆる店は閉店状態だ。国の政策で、一日1時間は外で運動していいことになってるだけだね。普段は、家族と過ごして、スタジオで制作することが日常だ。新型コロナウイルスの感染拡大が広がってからも、音楽制作はアクティブに保ち続けている。こういう状況下では、意気消沈して、クリエイティブに必要なモチベーションを見失う人も多い。だから、創作活動を続けてクリエイティブな思考を維持することは、メンタル的にも大事だと思うよ。

 とはいえ、DJとしての活動が主体だから、複雑な気持ちではある。3月以降は、周りの人間も含めて、クラブでのDJの仕事やブッキングを全て失ってしまったから。だけど、他のDJたちも、新しいスキルを学んだり、プロジェクトを始めたりして、時間を有効活用している。状況が改善された時に向けて、今は前進するしかない。

tofubeats: 僕も、DJの仕事はほとんど無くなりましたが、DJ Qと同じく、新しいことを学ぶために時間を費やしてますね。今はプロダクションの仕事がメインなので、この状況で生まれた自分の時間を、今まで出来ていなかった勉強の時間に使っています。例えば、音楽理論を学んだりとか。あと、ライブやDJは週末にやることがほとんどだったので、毎週気持ちを切り替える必要が無くなった分、ずっと制作マインドのテンションが続いていて、スタジオ作業の効率は上がったと思います。そのぶん長時間仕事を続けないように気を付けて、スタジオに入る時間の使い方には注意しています。

ーー今回の企画は、現状を予期したような内容でしたね。

tofubeats:実は、今回の『Red Bull Check Your DMs』用に楽曲制作をしたり、プロモ動画を撮ったのって、去年の11月なんですね。相手に会わないでリモートで作業するという、奇抜なコラボレーションとして始まった企画だったはずなのですが……今の状況は誰も、全く予測していなかったですね。まるで将来のためにリハーサルしていたみたい。

DJ Q:tofubeatsと僕は、時代の先を走ってたな(笑)。イギリス全体で言えば、大勢の人が、通勤やオフィスワークが無くなって困惑していたけど、僕のプロダクションはリモートワークが当たり前なんだ。スタジオで一人で作業して、プロデューサーとオンラインで作業するのが日常だから、新型コロナウイルスが広まって、都市封鎖が始まっても、慌てる必要はなかったね。

tofubeats:僕も自分のスタジオがあって良かったなと思いました。

DJ Q:外出が制限された時、ボーカリストはエンジニアと一緒に作業する人が多いから、レコーディング用のスタジオやスペースが見つからなくて、苦労しているみたい。僕とtofubeatsはある意味幸運だったかもしれない。プロダクションのスタイルが”インディペンデント”だからね。

ーー音楽制作におけるリモートワークが、今回の企画の大きなテーマでもありますが、リモートワークやリモートプロダクションの強みや弱みは、どのように考えていますか?

DJ Q:コロナ禍が収束しても、今まで以上にリモートワークをする生活習慣が定着すると思う。通勤だけじゃないね。打ち合わせもリモートでできるし、スタジオに入って作業する代わりに、データをやり取りして、楽曲制作もできる。自分の慣れ親しんだ環境で、作業に没頭することは、アウトプットのクオリティを高めやすいと思う。今まで、遠隔でコラボレーションしながら楽曲制作してきたから、相手のエネルギーやフィーリングがリモートでも感じることができるようになった。スタジオに入って何かしらの化学反応を起こしたい気持ちも理解できる。でも、リモートでも化学反応は起こせるよ。

tofubeats:元々、僕は一人でスタジオで作業するスタイルなので、今でもそれが当たり前だったんですが、プロになってからは、スタジオに入って人とコラボレーションする機会が増えた、という状況の変化がありました。逆に今は、完全リモートに戻ったことで、一人作業の安心感や心地よさを感じています。僕は人と一緒にスタジオに入って、流れの中で制作するより、今回の企画のように、相手からデータを受けて、自分のペースで作って戻す、みたいなやり方のほうが、自分のバイブスが出しやすい。そういう意味で、リモートワークにやりやすさは感じてますし、自分に向いているとは思います。

 僕の性格なんでしょうが、人と顔を合わせない方が、大胆なエディットや提案ができるんですよ。今回も、DJ Qと一緒にスタジオにいたら、自分の声でラップはできなかったと思う。そういう部分が、逆にプロダクションの面白さへ繋がってきているところはありますね。

ーーコラボレーションする相手や、プロジェクトをリモートで一緒に進める相手を選ぶ際、どのようにして人を探しているのでしょうか?

DJ Q:フィーリングやバイブスが一番大事だね。それから、相手の音楽が好きになれるか。それらを探りながら、コラボレーションする相手をいつも決めている感じかな。起きている時はいつもオンライン状態だから、新しい音楽をネットで探したり、アーティストと会話してることが多いかも。僕はiMessageか、SNSのDMを使うことが多いね。

tofubeats:僕もDJ Qと似た探し方をしますね。オンラインで音源を聴いたり、ネットから情報を探したり。ただ、最近は、以前ほどアグレッシブにコラボレーターを探す時間は減っていて、逆に一人で作業する時間が増えてますね。あと、誘われて、コラボレーションする機会は増えました。

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