『未来少年コナン』の再放送を機に比較する“役職”の昔と今 クレジットの内外に見える業界の慣例
新型コロナウイルスの感染拡大によって、テレビでも作品制作や放送スケジュールに影響が及び、各局で放送の延期や過去作の再放送などの対応に追われた。例えばNHK総合はアニメ『キングダム』第3シリーズが、放送途中からアニメ『未来少年コナン』のデジタルリマスター版に切り替わったことでも話題になっている。
『未来少年コナン』自体の初放送は1978年。作品の役職クレジットに注目してみると、さすがに現在とは異なる部分も少なからず見受けられる。これは単純に、作品制作がアナログからデジタルに切り替わったためだとは言い切れない。なんとなく業界ごとの慣例や、それらの境目が薄れている様子も見えてくる。
監督とディレクターの違いは? 映画、テレビ、デジタル化
役職のクレジットとしては、やはり演出の代表としての監督とディレクターの違いが気になる人が多いかもしれない。その違いは日本語か英語かという違いではなく、業界の慣例としての側面が強い。利用頻度としては、監督は映画業界、ディレクターはテレビ業界に多く見られる肩書ではあるだろう。
分かりやすいのは、テレビ局のディレクターが独立して映画を制作すると、肩書がディレクターから監督に変わっている例である。さらにテレビドラマなどのシリーズだと、各話で担当者が異なっているため演出になっていることも多々ある。その上にシリーズディレクターがいたりする場合などで複雑だ。
また実写とアニメでも慣例の違いが見てとれる。テレビアニメでも役職クレジットがテレビ業界に準じている場合は監督ではなく演出になっている(作画監督など、工程の担当者としての表記はある)。ただアニメは外部で制作して納品するため、この何十年かの間に映画業界と同様のクレジット表記が増えた。
そして肩書で監督やディレクターが使用される役職といえば、CGを思い出す人も多いだろう。クレジットも監督、ディレクターともに、CGもしくはCGIが頭に置かれている。ただ前者がComputer Graphicsの略称であるのに対し、後者はComputer Generated Imageryと、少しばかり意味が異なっている。
このように見てみると役職のクレジットにおける慣例は、映画業界とテレビ業界との間にデジタル化も加わることで、境目が薄れていったと見て取ることもできる。とはいえハッキリと境目を一元化できるものでなはく、クレジット名を割り振る人や各役職の担当者自身の判断など、属人的な部分に委ねられている。