『名探偵コナン』のテクノロジーは時代と物語に合わせて進化する 重要なツールたちを改めて紹介
1994年に連載開始した『名探偵コナン』。2020年4月にはコミックス98巻が発売され、来年には100巻に到達する予定だ。日本で最も有名で、長く続いている推理マンガといえるだろう。
悪の組織に毒薬を飲まされ、頭脳はそのまま小学生の身体になってしまった高校生探偵・工藤新一。彼は初恋相手でもある幼なじみ・毛利蘭の家に「江戸川コナン」と名乗って居候し、彼女の父親で探偵の毛利小五郎のもとに寄せられた事件を解決するなかで、元に戻る方法を探っていく――。
原作者の青山剛昌が「殺人ラブコメ」と語るとおり、本格派のミステリーとラブストーリーが融合した物語が大きな魅力。同時に、服部平次や怪盗キッド、赤井秀一や安室透といった魅力的なキャラクターが続々と登場してきたのも、人気の理由だ。
……と前置きをしたうえで、逆に、本作の設定を活かすうえで“弱点”になるのはどこだろう? それはやはり、最大の面白さでもある「身体が縮んだ」ことに対する制限だろう。「自分で推理を披露できない」「犯人を捕まえられない」「捜査もスムーズにできない」といった逆境を、小学生の身体になった新一=江戸川コナンはどう打破していくのか? そのために生まれたのが、新一の正体を知る隣人・阿笠博士による「秘密道具」の数々だ。
蝶ネクタイ型変声機に腕時計型麻酔銃、キック力増強シューズ……25年以上の歴史の中で、時代や用途に合わせた“進化”を遂げてきた秘密道具たち。今回は、これらのアイテムにフォーカスして、コナンとテックの関係性を見ていきたい。
まずは、劇中で秘密道具が登場する経緯について振り返ろう。コナンが初めて挑んだのは、資産家令嬢の誘拐事件。まだ身体が小さくなって間もない彼は、イヌに乗って犯人の元へ突撃し、犯人との格闘で半殺しの目にあう。そしてメカの必要性を痛感し、博士に依頼するのだった(ちなみに、その際にとりあえず渡されたのが蝶ネクタイ型変声機。その後、キック力増強シューズが手渡される)。
蝶ネクタイ型変声機と腕時計型麻酔銃はセットだが、両者の登場にはラグがあり、麻酔銃の登場まではコナンは仕方なく、小五郎に灰皿をぶつけて気絶させるなど、苦労している。その間に登場するのは、前述のキック力増強シューズに、劇場版『名探偵コナン 14番目の標的』(98)でも大活躍した伸縮サスペンダーなど。
この伸縮サスペンダーは、原作ではそれほど出番がないが、劇場版では頻繁に登場。劇場版『名探偵コナン 漆黒の追跡者』(13)では、黒の組織との戦闘中、高層タワーからバンジージャンプのように飛び降りるシーンで使われている(目盛などの機能が追加されている)。
腕時計型麻酔銃が初登場するのは、コミックスの3巻、初の長編となる豪華客船での連続殺人事件だ。この後は、犯人を突き止める→腕時計型麻酔銃で小五郎たちを眠らせる→蝶ネクタイ型変声機で推理ショーを行う、といったパターンが定着。現在に至るまで、継承されている(ちなみに、16巻で初対決する怪盗キッドは変声機なしで声を七変化させ、コナンを驚愕させる)。
その後、少年探偵団との連絡ツールとしてトランシーバー機能が付いた探偵バッジが登場し、移動手段として9巻でターボエンジン付きスケートボードが登場。こちらも、アクションが多い劇場版では大活躍するアイテムだ。太陽電池で動くため日没後は使えなかったが、劇場版『名探偵コナン 世紀末の魔術師』(99)では、前もって充電しておけば日没後も30分間は走行可能な仕様にグレードアップしている。こちらも、技術革新と物語の進行の両方を鑑みて“進化”した例だ。
だいぶ間をあけて登場したのは、37巻~38巻で活躍するボール射出ベルト。それまでのコナンは近くにあるものを蹴ったり、サッカーボールを持参していたが、以降はその必要がなくなった。余談だが、キック力増強シューズの初登場時(2巻)、強さを調節できるダイヤルを「中」に合わせて小学校の体育の時間で使用したところ、蹴ったボールが豪速球と化し、大木をへし折るといったアクシデントが発生する。その後、犯人と家の中での格闘時、蹴るものが見当たらずキャベツを蹴るも粉砕、ヤカンに替えた後はコナンが足を負傷と、紆余曲折を経てきた。
ちなみに、コナンの秘密道具の中で最もカスタムされてきたのは何だろうか? それは恐らく、トレードマークの1つである「眼鏡」だろう。小さくなった新一が蘭に初めて会った際、正体を隠すために身に着けた思い出深いアイテムだが、2巻でレーダーとセンサーが付いた犯人追跡眼鏡へと進化し、劇場版『名探偵コナン 世紀末の魔術師』では犯人の狙撃に備えてレンズが硬質ガラスに交換され、劇場版『名探偵コナン 天国へのカウントダウン』(01)ではズーム機能(望遠鏡機能)が追加、さらに暗視機能や盗聴器と収音器が搭載されるなど、原作・劇場版双方で改良がくわえられ、非常に多機能なアイテムへと化している。