特集「コロナ以降のカルチャー テクノロジーはエンタメを救えるか」(Vol.1)

EXILEなどのライブを手がける藤本実に聞く“コロナ以降の演出”「参加型のライブがスタンダードになる」

「ディスプレイを越えた繋がりをどう作るかが重要」

ーーオンラインでのライブについては、現状かなりニーズが高まっていますが、このあたりは今後どうなると思いますか?

藤本:いくつもライブ配信を見ているのですが、まだまだお金を取れるようなプラットフォームではないし、ライブができないことによる代替案にしかなっていないと思います。逆に、配信でしか感じられない感動を生み出すことができれば、主軸になるプラットフォームだとも思います。例えば先ほど話した技術の延長線上で、アーティストが「今日は照明をどうしようかな」と手元の機械を動かしたら、見ている自分の部屋の照明が変化して、インタラクティブなコミュニケーションが生まれるとか。ライブ会場でそういう演出をしても、たとえアーティストが自分に向いてくれていても全員にやっている感が強いと思うのですが、配信だと閉鎖空間だし、自分のためだけにやってくれているように感じるわけです。そういった配信でしか出来ない良さを生み出すために、ディスプレイを越えた繋がりをどう作るかが重要だと考えています。

ーートーク系のライブ配信においても、観ている人が一番興奮するのはリアルタイムで双方向的にコミュニケーションが取れた瞬間ですからね。

藤本:そういう形態だと、コメント機能で質問して、何個かに1個反応が返ってくるわけなので、1万人中の数人だけがその興奮を体感できるじゃないですか。でも「アーティストが自分のためにやってくれている」と思わせられる仕組みを作ることができたら、配信を見ている全員が味わえると思うんです。ほかにも、アーティストが配信先で何かを投げたら、視聴者の空間に何らかの形で干渉するとか。作っている本人さえ、ある種わかりやすいトリック感があるにも関わらずなぜか感動できるんですよ(笑)。

ーーテーマパークと原理的には似ているのかもしれません。作り物だと分かっていても感動するというか。

藤本:確かに。気付きやすいトリックでも、丁寧に演出されていれば人は感動できるんだなと実感しました。これは空間演出にも言えるこですし、音響面でもまだまだチャンスがあると思います。

ーー個人的には音のほうが難しいという印象があります。全員が均一の環境になりづらいというか。

藤本:そうですね。そこはまだまだ課題がありそうです。noteにも書いたのですが、ライブでちょっと気持ち悪くなるくらいの低音を感じられることにも、実は意味があったんだと改めて気づかされました。

ーー少なくとも2020年から2021年中は、そういったテーマや演出が試される時期にもなりそうですね。

藤本:間違いないと思います。オリンピックに関しても、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の会長である森(喜朗)元首相が「当初考えていたものとは全く異なるものになる。コロナに打ち勝った後、といった演出になる」と発言しておられますが、届ける側もそれを受け取る側も、伝えたい想いや感動するポイントが以前と異なるものになっているはずなので、演出側としては前向きにそこをしっかり考えて、新しい表現を生み出していきたいです。

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