Googleが“スマートシティ計画”断念 新型コロナウイルスと住民反対運動の二重苦で

都市の監視と収益化に市民活動家や政治家が猛反発

 また、もともとのプロジェクトでは、13億ドル(約1300億円)の費用をかけて、木造住宅、暖房・照明付き歩道、公共Wi-Fi、交通と街路の生活をモニターする多数のカメラやセンサーを12エーカー、そしてその周辺350エーカーに設置する計画だったが、プライバシー侵害や大手テクノロジー企業による都市収益化に対して、地元住民から根強い反対があったと『The Verge』は伝えている(参考:https://www.theverge.com/2020/5/7/21250594/alphabet-sidewalk-labs-toronto-quayside-shutting-down)。

 2017年以降、テクノロジーを使用して交通渋滞、二酸化炭素排出、廃棄物を削減するために5,000万ドル(約50億円)以上が投入されたと『CNN』は伝えている(参考:https://edition.cnn.com/2020/05/07/tech/alphabet-toronto-sidewalk-labs-smart-city/index.html)。

 人と車両の動きを追跡するセンサーを設置し、高齢者など速度が遅い歩行者のために時間を確保する交差点も提案されたが、この計画は、市民のデータを収集することに対する懸念により論争を巻き起こし、活動家や政治家に非難された。

 Sidewalk Labsのビジョンを示す1,524ページにも及ぶ報告書では、独立したデータトラストを設置し、データ収集・利用を管理することが提案されたが、専門家らは、プライバシー、データ侵害、偏ったアルゴリズムに関する問題に対処できる保証はないと警告した。その結果、プロジェクトは大幅に縮小され、再開発される土地面積やデータ管理が制限されている。

 5月20日には、プロジェクトが継続できるかを決定するWaterfront Torontoの理事会が予定されていたが、その前にSidewalk Labsが身を引いた形だ(参考:https://www.cnbc.com/2020/05/07/alphabets-sidewalk-labs-abandons-plan-to-build-smart-city-in-toronto.html)。

 トロント再開発計画は世界中のスマートシティのモデルケースになると目されていたが、未来的都市を提案したAlphabetが撤退したことで、ハイテクユートピアの実現に向けて、地元住民との折り合いをつけることがいかに難しいかが浮き彫りとなった。

(画像=Pexelsより)

■Nagata Tombo
ライターであると同時にIT、エンタメ、クリエーティヴ系業界にも出入りする。水面下に潜んでいたかと思うと、大空をふわふわと飛びまわり、千里眼で世の中を俯瞰する。

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