Travis Scott × フォートナイト『Astronomical』、仮想空間から生まれる”体験”の意味を考察
また本当であれば、Travis Scottはこの4月に世界最高峰のフェスのひとつ、『コーチェラ2020』のヘッドライナーの一角としてステージに立つはずだったが、新型コロナウイルス禍による延期のため、それは残念ながら今回、幻に。それだけに『Astronomical』は、コーチェラでのヘッドライナーパフォーマンスを期待していたファンにとっては“仮想コーチェラ”の役割を果たしていたのではないだろうか?
さらに体験でいえば、自身が『フォートナイト』のプレイヤーとしてイベントに参加するほか、ゲーム実況ライバーの配信を見ながらイベントを体験するというゲームならではの体験も目立った。これも仮想コーチェラという観点でいえば、同フェス恒例のYouTubeライブ配信を彷彿とさせるものであり、”そこにいなくても楽しめる”という近年のフェスの形を図らずとも成していたことは興味深く、こういった副次的な楽しみ方が生まれたことも、オンラインゲームをプラットフォームにしたからこそだ。
一方で『フォートナイト』は、フリーミアムモデルのコンテンツという性質上、プレイヤーの経済状況にも左右される要素があり、その格差によって子供達の間では”フォートナイトいじめ”という問題が起こることがPolygonによって報告されている。経済格差は現在の新型コロナ禍では大きな社会問題として浮き彫りになっており、『Astronomical』においても一見、有料コスチュームなどのことを考えるとそういった格差が少なからず現れてくること部分であることは否めない。しかしながら基本はあくまで無料であり、”誰にでも平等なコンテンツ”であることは大きな意味を持つ。
そういった部分は、昨年公開されたドキュメンタリー『トラヴィス・スコット: Look Mom I Can Fly』で語られる「ファンからエネルギーをもらってものすごい力で返す」、「子供たちを勇気付けなければならない」といったTravis Scottのスタンスに通じるものであり、現在のような状況において、”エンタメは人々に対して何ができるのか?”という問いに対するひとつの答えになっているようにも思える。
その意味でコミュケーションツールとしても作用している『フォートナイト』をプラットフォームにした意味は大きく、様々な分断が起こる現在の状況下においては、連帯の精神を無くさないためにもエンタメが体験とともにコミュケーションを生み出すことは重要な意味を持つはずだ。
■Jun Fukunaga
音楽、映画を中心にフードや生活雑貨まで幅広く執筆する雑食性フリーランスライター。DJと音楽制作も少々。
Twitter:@LadyCitizen69
〈Source〉
https://www.polygon.com/2019/5/7/18534431/fortnite-rare-default-skins-bullying-harassment