東海オンエア主演『グレーゾーン・エージェンシー』に感じる気概 ジャンルを超えた“グレーな魅力”を解説

 ここ最近はタレントのYouTube進出がすすみ、テレビとYouTubeを股に掛けるクリエイターも増えてきてはいるものの、旧来的なテレビの世界からすると、まだまだYouTube・YouTuberは異分子だ。YouTuberがテレビに出ると、「収入」ばかりがフォーカスされ、彼らのクリエイティブにリスペクトのない演出も未だになくならない。本作はそんなテレビとYouTubeの溝を少しでも埋めようとする気概を感じるのだ。

 本作の演出家である住田崇は、バラエティ番組を多数手掛ける一方で、『架空OL日記』など、一風変わったドラマの作り手としても知られている。そして脚本の内村宏幸は放送作家として、ウッチャンナンチャンの番組には欠かせない存在だ(なお、氏は内村光良の従兄弟である)。長年、テレビの世界で生きてきた彼らによる、YouTube・YouTuberへのメッセージが込められているのかもしれない。

 この作品は、ドラマとバラエティ、そしてYouTube動画、どれでもあり、どれとも呼べないかもしれない、曖昧な領域(グレーゾーン)にある。その曖昧さが魅力なのだ。

■藤谷千明
ライター。81年生。ヴィジュアル系バンドを中心に執筆。最近はYouTubeや恋愛リアリティ番組なども。共著に「すべての道はV系へ通ず。」(市川哲史氏との共著・シンコーミュージック)。Twitter

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