学校閉鎖から1ヶ月 フィンランド教員がオンライン教育に見いだした“利点と欠点”

教員間の協力

 今回のインタビューで印象的だったのは、どちらの先生も教員間での協力について語っていたことだった。

 小学校で教えるミエットゥネン氏は「皆にとって可能な限りやりやすい環境を作るため同僚達と情報やアイデアを互いにシェアすることができて本当に感謝しています」と語る。教師達はアイデアをシェアして互いを助け合っており、現状を共有するために教師同士で定期的にオンラインミーティングを開いているとのことだ。

 中学校のヘイコラ氏は、教師の視点から遠隔学習になって以前より強く思うこととして、「教育関連の仕事はチームワークであるということ」と語った。「同僚たちからはパワーもアイデアもやる気ももらえました」。

終わりに

 記事執筆時点でフィンランドではコロナ感染のピークは過ぎたと国立健康福祉研究所THLの研究員がYLEに語っており、もしかしたら今後学校に関しては当初の予定通り5月13日に解除される可能性もある。6月に入ったらどうせ8月半ばまでの夏休みが始まるので、数週間延長されるのもあり得ることだ。

 生徒達も久々にクラスメイトや先生に会うのが待ちきれないことだろう。夏休みが終わって生徒達が学校に戻る頃には、これまで通り友達と共に遊び学べる環境が戻ることを願いたい。

 それでも、コロナウイルスが人々の生活、教育環境、労働環境に強いた変化の中には恒久的なものや、更なる変化のきっかけとなったものもあるはずだ。フィンランドはスムーズに遠隔教育化ができたように見えるが、インタビューした2教員が述べたように問題点も見えてきた。

 今後は遠隔授業の欠点である「社会性」を伸ばすための工夫を施した遠隔サービスや、別記事で言及した「一つの部屋の中で同時に複数の会話が発生する状況」をデジタルで可能にするアプリケーションなども生まれてくるのではないだろうかと筆者は考える。また本記事では深入りしなかったものの、家庭環境の違いから来る問題や教育の不平等性といった以前から存在した問題も、遠隔教育によりより浮き彫りになった部分である。このような受けてフィンランドの教育が今後どう変化していくのか見守っていきたい。

 日本とフィンランドでは歴史、文化、教育システムなど様々な違いがあるが、フィンランドの教師が語る遠隔教育の利点・欠点から何らかの発見や気づきが日本の読者の皆様にあれば筆者としては嬉しい。

Source: European Commission (PDF), European Commission (2, PDF), Variety, The Verge, YLE, OECD, OECD (2, PDF), YLE (2), IS, YLE (3)

■Yu Ando
フィンランド在住フリーライター。執筆分野は、エンタメ、ガジェット、サイエンスから、社会福祉やアートに文化、更にはオカルト系まで幅広い。ライター業の傍らアート活動も行っているほか、フィン・日両国の文化を紹介する講演を行うことも。趣味はガジェットへの散財。
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