ヒカキンの言葉はなぜ胸を打つのか 卒業生の息子をもつ母親が見た“メッセージ動画”

 新型コロナウイルスの影響で行われることのなかった卒業式がある。人生の節目の大切なセレモニー。未曾有の事態に奪われてしまった子どもたちの思いは、計り知れないものがあるだろう。子どもたちのために何かしたいーーそう思い立ち上がったのだろうか、人気YouTuberのヒカキンが、3月13日に新しい動画を配信した。

卒業式が出来なかったみんなへ、ヒカキンより。

 「卒業式が出来なかったみんなへ、ヒカキンより。」ーーそう題された動画で、映し出されたのはいつものヒカキンの部屋。静かなピアノの曲が流れるなか、正装姿のヒカキンがゆっくりと現れて一礼する。

「卒業生の皆さんへ。大変僭越ながら、私ヒカキンより祝辞の言葉を述べさせていただきます」

 そう始まるこの動画は、新型コロナウイルスによる一斉休校の影響で、卒業式に参加できなかった子どもたちへのメッセージだ。ヒカキンがメッセージを伝えたい子どもたちと同世代の子どもをもつ筆者の胸にも、ズシンと響く言葉が続く。動画が公開された3月13日は、折しも筆者の息子が中学校の卒業式を迎えた日だった。自粛ムードのなか縮小された卒業式。なんとか開催された小規模な卒業式を体験したからこそ、ヒカキンの動画には感情を強く動かされる。

 とくに印象に残るのは彼が紡ぐ嘘のない言葉の数々だ。自分自身は小中高と卒業式を経験してきたから、「みんなの気持ちを想像することはできても、本当の意味でわかることはできません」と冒頭に語る。上っ面の悲しみをすくい上げ、無意味に共感し同情するのではないという姿勢がよく現れている。だからこそヒカキンの言葉は、子どもたちの耳にすんなりと届くのではないだろうか。

今、戦うすべての"あなた"に見て欲しいメッセージ動画

 卒業式。そのような当たり前のことがなくなってしまった、2020年3月に卒業を迎える子どもたち。人生の先輩として、ヒカキンは誤解を恐れずに伝えたいと語る。

「今回のような特別な経験は、これから先の長い人生の上で絶対に財産になる」

 たしかにそうだ。恐らく学校の先生も保護者も、みんなそう子どもたちに伝えたいのではないだろうか。しかし我々の声では、子どもたちには届きにくいと感じることがある。子どもたちの“楽しいお兄さん”的存在でありながら、YouTuberという新たな道を開拓してきたパイオニアであり、大きな憧れでもあり続けるヒカキンだからこそ、説得力を持って伝えられるのだろう。

「打ちのめされてから復活するときに、人間は成長する」

 なんて強い言葉だろう。綺麗事と言われればそこまでだが、誰かに言ってもらいたいと思わないだろうか? この動画は卒業式ができなかった子どもたちだけではなく、今を必死に戦うすべての人たちに見てもらいたいと思った。

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