『テラスハウス』東京編:第29~32話ーー“物事を単純化する危うさ”が浮き彫りに?
住人とスタジオメンバーの“幸福な関係性”について
スタジオメンバーがテラスハウスに入ってきた住人を“単純化”し、彼らが複雑な性格を垣間見せるとひとたび非難を始める。思えばそれはこれまでにも起きていたことだった。軽井沢編の優衣がわかりやすい例だろう。だけど愛華のように、それが明確な原因で卒業したいと思うメンバーが出てきたいま、住人とスタジオメンバーの“幸福な関係性”について、改めて問い直してみる必要があるのではないだろうか。
ただ、『テラスハウス』が孕む前述の“危うさ”を前提とした上でも、やっぱりこの番組は他にはない魅力で満ちあふれているのは確かだ。何度も言うけれど、(これはスタジオメンバーのブレやすい意見も含めて)“人間の複雑さ”がこれほど表に出る番組は他に類を見ない。それを非難されるだけでは、いささかもったいないと言わざるを得ないので、この4週の素敵な場面を2つあげて本稿を締めたいと思います。
「やっと出てきたね」(愛華)
29th WEEKにて。花が凌をごはんに誘ったものの、電話越しに「親友とごはんに行くことになっちゃったから、今日はごめん」と断られてしまう場面。失意の花を「めっちゃかわいいね、メイク」とビビが慰めると「かわいいけどデートはできないの」と花は寂しげに答える。そこで「わかる。アイス買って『タイタニック』観ようぜ」と励ますビビの明るさにも救われながら、ついに堪えきれず泣いてしまった花を胸で受け止め、「やっと(涙)出てきたね」とささやく愛華の優しさにこちらまで泣けてきてしまった。
「泣きそうだなぁと思った。だけど泣きたくない」(ビビ)
32nd WEEKで、ついにビビが凌を諦めるしかない状況に置かれる場面。初めて一緒に聴いた音楽を再び流し、キスをし、「夢に向かってがんばってね」とお互いに言葉を交わす。そこでビビは不意に泣きそうになってしまうものの、「だけど泣きたくない。あなたの前では泣きたくない」と吐露する。“泣きそうだけど泣かない”というのはこれも自己矛盾、複雑さの現れであり、また、恋をする儚さと美しさに満ち満ちた尊い瞬間だった。
■原航平
1995年生まれ、映画好きのライター。「クイック・ジャパン」などでも執筆。
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■番組情報
『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』
2019年5月14日よりNetflixにて毎週火曜に新エピソード先行配信(4週に1週休止)
2019年6月11日よりFODにて毎週火曜深夜0時に配信予定(4週に1週休止)
2019年7月よりフジテレビにて、地上波放送予定
(c)フジテレビ/イースト・エンタテインメント