kz(livetune)が考える、VTuber文化ならではの魅力「僕らが10年かけたことを、わずか2年でやってる」

kzが語るVTuber文化の魅力

『VTuber』という言葉は『ボカロ』という音楽タグに似てる

――ちなみに、VTuberの音楽にかかわる若手アーティストの方で、kzさんが注目しているのは?

kz:みんな口を揃えて言うと思いますけど、TEMPLIMEですかね。

――星宮ととさんとのコラボレーションなどで知られているユニットですね。

kz:ああいう音楽って、基本的にはフューチャーベース的なものになりがちだと思うんですけど、TEMPLIMEは曲をつくっているカボスニッキくんが多分もともとバンド畑の人間だと思うんですけど、だからなのかどうしてもそこにストレートに行かないというか。ダンス・ミュージックをベースにしてはいますけど、やりたいことは「ポップス」だと思うんです。それは、ひょっとしたら僕とも近い感覚なのかもしれない。あとは、コーサカくん(MonsterZ MATE)もシンプルにMCの力がすごいですし、YACAさん(ワニのヤカ/YACA IN DA HOUSE)もそうで、Vの音楽はヒップホップ系の人も多いですよね。時代もあると思いますが。

――文化系ヒップホップの新しい才能がこのシーンから出てきそうな期待感もあります。

kz:KMNZをはじめとするFictyの人たちはそういう感覚ですよね。同時に歌い手のようなカルチャーに近い人たちもいて、「みんなちがってみんないい」という雰囲気で。

――そのごった煮感は、やはりボカロカルチャーの黎明期と似ているのかもしれません。

kz:「VTuber」という言葉って、僕は「ボーカロイド」というCD店の音楽タグに似ているような気がしているんです。「ボーカロイドって別に音楽ジャンルではないでしょ?」という話と同じで、VTuberと言われても、動画勢なのか配信勢なのかで活動内容は全然違いますし、配信勢の中にも、YouTubeだけではなく、SHOWROOMを筆頭にした様々な配信サービスを拠点にしている様々な別の世界線があります。それに、最近はライブ配信重視の人たちが増えていることもあって、それぞれが積み重ねる時間が膨大になってきて、昔から活動している人たちの配信を今から全部追えるかというと、なかなか難しくもなってきていて。でも、それも含めて、このカルチャーならではの魅力なんだろうな、と感じます。

――最近ではVTuberの方々が大きなイベントに出演することも増えていますが、kzさんからすると、VTuberのカルチャーを見はじめた頃と比べてどんな変化を感じますか?

kz:VTuberの方たちは、僕らが10年かけてやってきたことを、わずか2年程度でやっていると思うんです。なので、僕としては、スピードが速すぎてついていけていない気もしています(笑)。でも、いち視聴者として観ていて、「すごくいいな」と思うのは、今年の秋ごろから、それぞれの単独のイベントが次々に立ち上がっていることで。もちろん、様々な方々を集めたフェスみたいなイベントも楽しいですけど、それぞれの良さを殺しかねない側面もありますし、「ずっと濃い/面白いことをやり続けてほしい」と思うので。そういう意味でも、それぞれが頑張っている今の雰囲気は、見ていても楽しいです。まだまだVTuberという存在はメジャーなものというよりも、サブカルチャーのひとつだと思うので、これからより広がっていくとしても、今のように面白いままで、その魅力が広がっていってくれたら嬉しいな、と思っています。

(取材・文=杉山仁/撮影=はぎひさこ)

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