エハラミオリ&赤山コウに聞く、斗和キセキ1stライブ『New Voyage』までの軌跡

エハラミオリ&赤山コウに聞く、斗和キセキ1stライブ『New Voyage』までの軌跡

 「新世代」の「王道」をテーマに掲げて2019年3月に活動をはじめると、背中に背負っている三角の“モッド”が「ガンダムアストレイ レッドフレーム改」に似ていると話題になり、一夜にして人気バーチャルYouTuberの仲間入りを果たした斗和キセキ。彼女が12月3日にファーストライブ「New Voyage」を白金高輪 SELENE b2で開催する。

 斗和キセキはこのライブに向け、オリジナル曲の7曲連続リリースを敢行。そのどれもが、彼女が演じる「New Voyage」という架空の物語の世界観を伝える楽曲になっているという。彼女の活動をサポートする2人の関係者=プロデューサーのエハラミオリ氏(写真右)と楽曲を手掛ける赤山コウ氏(写真左)に、今回の連続リリース楽曲の制作風景や、ファーストライブ『New Voyage』について話を聞いた。(杉山仁)

「RAINBOW GIRL」〜“レッドフレーム改”でのバズが生まれた裏側

――エハラさんはプロデューサーとして、赤山さんは初投稿動画「RAINBOW GIRL」のアレンジャー兼ドラマーとして、最初期の頃から斗和キセキさんの活動を支えてきている方だと思います。彼女の第一印象はどんなものだったんでしょう?

エハラ:一言でいうと、「ギャル」ですね(笑)。「プロギャル」です。

赤山:僕はここまで根っからのギャルと接することって、これまであまりなかったんですよ。

エハラ:僕も初めて会う人種という感覚です。プロギャルなので、めちゃくちゃポジティブなんですよ。「ネガティブなこと考えたって意味ないじゃん?」って言っていて。でも、同時に活動に対しては真剣で、すごく真面目でもあります。打ち合わせをしても真剣なので、結構長くなったりしますし、その中で色んなアイディアを出してくれたりもします。

――斗和キセキさんの初めての動画投稿となったのは、2019年3月1日の「RAINBOW GIRL」ですよね。この動画は、バーチャルな存在のキセキさんがリアルなバンドの演奏にあわせて歌う動画ですが、これはどんなアイディアで生まれたものだったんでしょう?

エハラ:これは僕が発案したアイディアでした。当時はVTuberのカバーや歌ってみた動画が流行っていましたけど、僕らとしては最初からオリジナルソングをつくるわけにもいかず、かといって普通の「歌ってみた」がやりたいわけでもないという中で、「バンドセットで動画を撮ってみよう」ということを思いつきました。「RAINBOW GIRL」はたまたま本人も知っている曲でしたし、斗和キセキ自身にアクセサリーとして虹色のモチーフ(胸のスカーフ)があるので、「この曲ならぴったりなんじゃないか」と思ったんです。そこで、大学時代からの友人だった赤山くんに声をかけて、アレンジをお願いしました。

赤山:それが、僕が斗和キセキの活動にかかわる最初のきっかけでした。

【バーチャルYouTuberが】RAINBOW GIRL (covered by 斗和キセキ)【バンドやった】

エハラ:「RAINBOW GIRL」は画面の中の女の子の歌なので、斗和キセキを歌詞の女の子と同じような形でディスプレイで登場させています。液晶画面と現実のバンドを同時に撮影すると光の調整が難しくて、投稿の日の朝まで編集作業していたのを覚えていますね。

――キセキさんの場合は、そこから非常にユニークな経緯で一躍有名になりました。初投稿からすぐに、キセキさんの背中の三角の形状が「ガンダムアストレイ レッドフレーム改」に似ているとガンダムファンの間で話題になり、そこから派生して、三角に似ているものを色んな方々が大喜利のようにリプライして盛り上がっていくという、すごい展開で(笑)。

エハラ:はい(笑)。最初に「背中に何か大きなものを乗せよう」と考えたのは、僕でした。これは男のロマンというか、「何か背負ってくれたらかっこいい!」というアイディアで。それが他の方との差別化にもなると思っていました。それで本人に何を背負いたいか聞いてみたら、「私は三角形がいい!」という話になって。あの三角形は、その足し算で生まれたものでした。なので、最初にガンダムファンの方々が盛り上がってくれたときは、とても驚きました。スタッフ総出で対応して、全員寝るタイミングが分からなくなって……。

赤山:本当に大変でした(笑)。

エハラ:でも同時に、とてもありがたい出来事だったと思っています。

――僕も当時リアルタイムで見ていたのですが、きっかけは「レッドフレーム改」だとしても、ハプニングに楽しそうに対応するキセキさんの姿が魅力的だったからこその出来事でもあったように思います。あのポジティブな人柄が生んだバズでもあったといいますか。

赤山:そのポジティブさは、やはり僕も感じるところですね。そういえば、RECのときに聞いた話なんですけど、あるとき彼女がコストコで肉を大量に買ったみたいなんですよ。それで家に帰ってきたら、そのタイミングでふるさと納税の返礼品で肉が届いて、冷蔵庫が肉でいっぱいになってしまったらしくて(笑)。普通は「どうやって処理しよう?」と困るところじゃないですか。それなのに、彼女はそれを「王様みたいでいい気分でした!」と話していて(笑)。何でも面白い方に考えるタイプの人なんだな、と感じました。

エハラ:彼女は最初から本当にあのままで、ずっと変わっていないんですよ。なので、僕らとしてもいい意味で、これまでの中で成長を感じるような感覚ではなくて、最初から斗和キセキとして完成されていた、という感覚でした。ひとつ成長の余地があるとしたら、意外と人見知りなところぐらいです(笑)。動画の撮影上、初対面の色々な方に会うことになるんですけど、初めて会う人に対してはこっちが観ていても分かるくらい緊張していたりするんですよ。でも、とにかく最初からすごかったです。

――では、今回のオリジナル曲の7連続リリースと、ファーストライブ「New Voyage」がどんなふうに出てきた企画だったのかを教えてもらえますか?

エハラ:今回の連続リリースとライブに関しては、最初に会社として「斗和キセキのライブをしたい」というアイディアが僕の方にきたんですが、斗和キセキは、もともとTwitterのバズがあって有名になったバーチャルYouTuberなので、音楽のファンの母数としては決して多いとは思っていなくて。「これだけフォロワーが多いから、アーティストとしてもすぐに勝負できるだろう」という気持ちは、僕の中では一切なかったんです。それって音楽に対してどれくらい真剣に時間と熱意を注いできたかが大切だと思いますし、最初から音楽に専念して活動していれば話はきっと違いますけど、斗和キセキの場合はそうではなかったので。

――今はバーチャルシンガーとして歌を専門に活動している人たちも多いですしね。

エハラ:そうですね。だからこそ、面白いものにするためにどんな可能性があるかを考えたんですが、バーチャルYouTuberは、基本的には美男/美女のコンテンツで、そのキャラクターは、基本的に魂と同一のものとして見られますよね。だとしたら、そうではない架空の物語を用意して、その世界観の中のキャラクターをキセキに“演じて”もらい、音楽はその劇伴的に存在するような形にすれば、通常の動画とはまた違った形で、斗和キセキという色々なエンターテインメントに挑戦するバーチャルYouTuberの企画が成立すると思いました。

――ああ、なるほど。

エハラ:僕の場合、もともとバーチャルYouTuberを接触のコンテンツだけにはしたくない、という気持ちがあるんですよ。もちろん、それも面白い活動のひとつですけど、それ以外にも色々な可能性があると思っていて。そう考えたときに、キセキに架空の世界観に入ってもらうことで、「バーチャルYouTuberの斗和キセキの曲」ではなくて、「斗和キセキが参加している、とある世界観の曲」という形で、キセキのファンの方々はもちろん、そうじゃない人も楽しめる新しいコンテンツになるんじゃないか、と思いました。なので、今回の連続リリース曲は「New Voyage」という世界観の劇伴的な要素を持っていて、「バーチャルYouTuberの斗和キセキとしてのオリジナル曲」とはまた別のものだと考えています。音楽を赤山くんに担当してもらい、同時進行で僕がその曲からストーリーを組んでいきました。

――アニメ本編と劇伴を並走してつくっていくような感覚ですね。

エハラ:作業的には近いものだったと思います。それから、もうひとつ大切なのは、今回のファーストライブ「New Voyage」に向けた一連の活動は、そのライブで完結するものではないということです。むしろ、「斗和キセキが『New Voyage』というひとつの世界観の制作を開始しましたよ」「そのはじまりの部分ですよ」という形で、「New Voyage」という大きな物語を表現するための、第一歩が「たまたまライブだった」という構造になっています。

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