連載:ゴールデンボンバー歌広場淳の「続・格ゲーマーは死ななきゃ安い」

金爆・歌広場淳連載:自画自賛させてほしい、冠番組『格ゲー喫茶ハメじゅん』の“新しさ”

 大のゲームフリークとして知られ、ゲーマーからの信頼も厚いゴールデンボンバー・歌広場淳による連載「続・格ゲーマーは死ななきゃ安い」。今回はTOKYO MXで10月よりスタートした新番組『格ゲー喫茶ハメじゅん』について、歌広場がじっくり語る。同番組は「eスポーツブーム」と言われて久しい中で、なぜ新しく、なぜ面白いのか。(編集部)

“ただのブーム”から一歩進んだ新番組

 10月から、TOKYO MXで格闘ゲーム専門のバラエティ番組『格ゲー喫茶ハメじゅん』がスタートしました。

 最初は「レギュラーのテレビ番組が決まるかもしれない」とだけ聞いて、単純によろこんでいたら、なんと「歌広場の冠番組で、格ゲーをメインに扱う」と。「地上波で格ゲーの番組が!?」と驚きましたが、単純に「ゲーム番組」だと、詳しくないジャンルのタイトルを取り扱うことになったときに魅力がうまく伝えられないので、その点でもありがたいと思いました。

 しかも共演者は、ライター、また解説・実況者、イベント運営など、多岐にわたる活動で格闘ゲームシーンを支え続けてきた、「ハメコ。」さん。『ゲーメスト』や『アルカディア』という、伝説的なゲーム雑誌で執筆された記事も読んでいたし、一緒に番組ができることが単純にうれしかったです。またこの1~2年で、僕はタレントというライトな立場から、ハメコ。さんはゲームを熟知した専門家の立場から、多くのメディアに出演する機会があり、二人でならライトユーザーとコアユーザーをまたにかけて、すごく広いレンジで、格ゲーの魅力が伝えられるんじゃないかと。

 この番組は、タイトル通り喫茶店を舞台に展開されます。そして、この気軽な雰囲気がとてもいいと思うんです。毎回、ゲストにプロゲーマーを迎えてトークをしますが、これまでのテレビ番組であれば、サイバーで近未来的なセットで、「ゲームのスペシャリストが来てくれました!」と、本人たちの意図とは別に、過剰に崇めるような部分がありました。それが、『ハメじゅん』では必要以上に持ち上げることなく、まさにゲーセン帰りの喫茶店、という雰囲気で、プロゲーマーの素の人間性を引き出すことができると思うんです。

 初回のゲストが『ストリートファイター』シリーズで活躍する、ときどさんとボンちゃんさんだったのもよかったと思います。メディア出演歴も豊富で話し慣れていますし、世界的に有名な大会で優勝しているから、知らない人が見ても素直にすごいと思える。その上で、リラックスしてプライベートについても話してくれたのが素晴らしかった。eスポーツが一過性のブームであるなら、プロゲーマーという存在の特殊性を強調して、尖ったエピソードを聞き、「よく分からないけど、とにかくすごい人」として伝えることがメインになったと思います。そうではなく、地上波で「もともとはゲーム好きで、気のいいお兄ちゃんなんだ」という、プロゲーマーの等身大の部分がきちんと伝えられたことに、ただのブームというフェーズから一歩進めたんだという手応えがあります。

 未放送のものも含めて番組を進めてきたなかで、プロゲーマーのみなさんが収録後に「すごくいい雰囲気で楽しかった」と言ってくれるのが印象的です。オンエアにどれだけ乗るかはわかりませんが、みなさん、照れ笑いをしながら話してくれるんですよ。僕の経験上、必要以上に自分を大きく見せようとする人は照れ笑いなんかしないし、「テレビ番組のゲスト」という過剰なプレッシャーを感じることなく、素直にトークができたということだと思います。例えば、女子レスリングの吉田沙保里さんが、世界最強選手としてのイメージから少し離れて、番組を通じてガーリィな趣味を持っているという一面を知ったとき、あらためて魅力的だなと感じた方は多かったはず。世界で活躍するプロゲーマーを招く『ハメじゅん』も、結果としてそういう番組になっているのがいいなと。

 もうひとつ、番組としてのポイントを挙げるなら、アシスタントとして参加してくれているitsukaちゃんというアーティストの存在です。「ゲームは大好きだけど格ゲーはやったことがない」という、要は視聴者の皆さんの立場に近い人がいると、その目を気にしたり、質問に答えたりする。そうすることで、「格ゲーおじさんが多くの人に伝わらない好きな話をしている」という狭い状況に陥らない。また、彼女がイチから格ゲーに挑戦するコーナーもとても面白くて、完全に初心者なのに、レバーとボタンの音がめちゃくちゃきれいなんです。適当にガチャガチャプレイするのではなく、きちんとキャラクター(ザンギエフ)を操作しようとしているのがわかるし、テニスに例えるなら「初めてラケットを握ったのに、もうラリーができる」という状態。センスというか、“感じ”がとてもよくて、こういう人はなかなかいません。シーンが盛り上がっていくためには、“姫”というアイコニックな存在が必要だし、格ゲーファンには、すでにそうなりつつある僕と一緒に、彼女の“取り巻き”になっていただきたいですね(笑)。

 考えてみれば、僕が子供のころ、ゲームがテレビに映ることなんてほとんどありませんでした。特に格ゲーが取り上げられることなんてまったくと言っていいほどなくて、そんななかで、『THE KING OF FIGHTERS ’96』のCMがテレビで流れた時、全身の血が沸騰するようなテンションの上がり方をしたのをよく覚えています。レオナというキャラクターがVスラッシャー(※空中から飛びかかり、手刀でVの字に切りつける超必殺技)を決めているシーンがあって、「僕の好きなものはこんなにカッコいいんだぞ!」と妙に誇らしい気分になって。せっかくの地上波という舞台ですから、『ハメじゅん』でもそういう小さな頃の自分が見ていたら「うおっ!」と思うような瞬間が作れたらいいなと思います。

 実は、僕はこの番組を通じて、よくある「もっと多くの人に格ゲーをプレイしてもらいたい」という気持ちはあまり持っていません。それは実際にはまだハードルが高すぎるし、今までに「プレイヤー人口を増やす」という目的を設定してしまったがために、成功しなかった取り組みも少なからずあった。よく、格ゲーを実際にプレイせず、観るだけの人を“動画勢”と言って揶揄する向きがありますが、観るだけの何がいけないんでしょう?

 例えば、日本国内でもかつてない盛り上がりを見せたラグビー。この間までサッカーや野球のことばかり話していた人たちが、みんなで盛り上がっている姿を見て、「“にわか”ってサイコー!」って思うんです。シーンのために努力し続けてきた人たちが報われた瞬間に他ならないし、こういう人たちが増えてくれれば、ビジネスとしてもスケールできる。渋谷のスクランブル交差点でみんなが見上げる先に、プロゲーマーが日本を背負って戦っている……という未来のためには、絶対にそういう人たちが必要。地上波で格ゲーを扱うということには、“にわか”の人たちにもっと増えてもらう、という意味があると思っています。……っていうか、“にわか”って言葉の響きが悪いのであって、そこに該当する人が悪いわけないですよね(笑)。

【ときど・ボンちゃん】格ゲー喫茶ハメじゅん【第1回】

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