金爆・歌広場淳が語る、悩んだ末に気づいた「eスポーツシーンで僕にしかできないこと」

歌広場淳「eスポーツで僕にできること」

 大のゲームフリークとして知られ、ゲーマーからの信頼も厚いゴールデンボンバー・歌広場淳による連載「続・格ゲーマーは死ななきゃ安い」が再スタート! eスポーツというムーブメントのなかでゲームの仕事が増え、「ゲームが楽しくなくなった」時期があったという歌広場淳が、それを乗り越え、前向きな力に変えた経緯を明かす。(編集部)

「ゲームがちょっと好き」ではできないことが、僕にはできる

  2018年から2019年にかけて、ゲームのお仕事をさせていただく機会が増えたなかで、あらためて気づいたことありました。「僕がなぜゲームをするのか」という命題について、ひとつの答えが出たんです。これまではただ好きにやっていればよかったゲームについて意見を求められるようになって、それに応えるためにプレイするのが窮屈に感じられた時期があった。そこであらためて思ったのは、「僕はゲームが持つ自由さが好きだったんだ」ということでした。

 ゲームをすることは、もともと何かとトレードオフではない。何かを失う代わりにゲームの楽しさを享受する、というものではないと思うんです。例えば、ギャンブルをする人は、必ずしもお金がほしいからする、というわけではないでしょう。お金を稼ぐんだったら、ちゃんと働くのが一番。それでもギャンブルをするのは、「一見すると何のためにもならないこと」が楽しいからなんじゃないかと。その瞬間だけは、自分が何にも縛られず、自由でいられるから。ゲームもそうで、考えてみれば、僕がハマったのは、親が最初に買ってくれたファミコンの野球ゲームではなく、初めて自分で自由に選んだ『ハイドライド3 闇からの訪問者』からでした。

 ゲームのお話をするとき、いくつかのタイトルのなかから「どれが好きですか?」と聞かれたとして、「申し訳ないんですけど、僕はこれです」と、手元から好きなゲームを出していたのが、これまでの僕だった。でも、近年のeスポーツの盛り上がりのなかで、限られた選択肢から選ばざるを得ない状況が、ずっと続いていました。お仕事の世界では当たり前のトレードオフ、「何かを失って何かを得る」ということが、ゲームでも起こるんだなと。これが、プロゲーマーの方々が言う、窮屈さの正体だと思います。これまでは、見返りなんてなくても好きでやっていたのに、eスポーツという文脈のなかでリターンが生まれたことで、当然それに見合ったプレイやトークが要求される、ということです。

 もちろん、僕とゲームの関係が変わっただけで、ゲームそのものの楽しさはまったく変わらないのですが、そんなわけで、ゲームが少しつまらなく感じてしまった時期がありました。ゲームに救われてきた僕にとって、それはショックなことだった。けれど、この連載のタイトルは「格ゲーマーは死ななきゃ安い」。ここからは、そんな状況から僕がどう変わっていったかお話ししたいと思います。

 僕が振り切れたきっかけは、多くのアーティストさんやタレントさんがゲームに携わるようになり、僕もその一員としていろんな場に出ていくなかで、明確に「自分にしかできないこと」があると気づいたからです。eスポーツの現行タイトルのなかで、特に注目が集まりやすい『ストリートファイターV』を実際にプレイしていて、なおかつ、もともとゲーマー出身であるというやりこみができているタレントは、ゴールデンボンバー・歌広場淳しかいないのではないか。「ちょっと好き」なだけではできないことが、僕にはできるんだと。

 これは、僕がゲームをつまらないと思ってしまった理由にもつながるのですが、僕がお仕事で対戦する相手は、ゲームが好きだけれどプレイ経験は僕より少ない芸能人の方か、逆に超絶やり込んでいるプロゲーマーの方しかいませんでした。少しプレイしているくらいの人には負けようがないし、プロゲーマーには勝てない。そのことが、僕の特殊な立ち位置を象徴しています。ただ、ちょうどいい相手がいれば、それは楽しいことになるんじゃないかと。そこで僕が対戦を申し込んだのが、『ストV』が異常にうまいと話題になっていた高知県のご当地キャラ「しんじょう君」でした。キャラクター的にプロレス的なやり合いもできるし、多くの人を巻き込める、他にはないマッチアップになるんじゃないかと。

 実際、8月16日に対戦して、僕は3-2で負けてしまいましたが、これまでのどんな芸能人の方との対戦より、大きな話題になりました。それは間違いなく、試合の内容がよかったからです。もちろん、プロの目からすればいろいろとアラはあると思いますが、観た人全員が熱くなれた。僕は「これだ!」と思いました。

 eスポーツが多くの人にとって遠い世界の出来事に感じられてしまうのは、ゲームが本質的に、良くも悪くも「無駄」なものであり、「なんか、プロの人がすごいことやってるよね~」という印象があるからだと思います。しかし、プロでもない僕らが、高いレベルで、最後までどちらが勝つかわからない、本気の勝負をしているというのは、もともとeスポーツに興味がない人にとっても、確実に面白いものだった。そういうプレイだったり、企画だったりができる“有名人”は、僕しかいない。そうして「自分にしかできないこと」を見出したことで、僕はまた元気になりました。

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