BitStar渡邉拓と七瀬大空が語る“バーチャルタレントの可能性”と研究拠点の大切さ

BitStar渡邉拓&七瀬大空インタビュー

 プロダクション「E-DGE」をはじめとした、インフルエンサーマーケティングのトータルソリューションを展開する株式会社BitStarが、東京都・秋葉原エリアにVR・バーチャルYouTuber(VTuber)研究を行う「BitStar Akihabara Lab」を開設した。

 「バーチャルYouTuberに関する研究開発」や「VTuber専用のコンテンツ制作にあたる収録スタジオ」機能を備え、場所の貸し出しも行なっているという同ラボ。今回は同社の代表取締役である渡邉拓氏と、同社と株式会社テレビ東京コミュニケーションズが共同プロデュースするバーチャルシンガー・七瀬大空にインタビューを行い、スタジオ開設の経緯や、バーチャルタレントの可能性などについて、じっくり語り合ってもらった。(編集部)

「“なりたい自分”になって配信できる世界はシンプルに素晴らしい」(渡邉)

ーーまずは、インフルエンサープロダクション「E-DGE」を運営するなど、これまでYouTuber事業に力を入れてきたBitStarが、バーチャルYouTuberを積極的に取り扱うようになった理由について聞かせてください。

渡邉拓(以下、渡邉):大前提として、元々バーチャルYouTuberにはすごく可能性を感じていたんです。インフルエンサーのなかには、諸般の理由で顔出しができなくて、それがネックになって、活動が制限されたまま引退する方もいるわけですから、いろんな人がアバター越しに“なりたい自分”になって配信できる世界って、シンプルに素晴らしいじゃないですか。元々インフルエンサーを軸として会社をスタートしているので、それがリアルかバーチャルかの違いでしかなくて、いずれも個人の自己実現を広げる手段のひとつだと思っています。

ーーそういった背景があって、BitStar Akihabara Lab.を開設したんですか。

渡邉:理由は他にもあって、バーチャルYouTuberのコンテンツ作りは、環境によって制限があったり、逆に可能性が広がることもあると思っています。例えば環境によっては、コラボ配信をするにしても人数制限があるから全員は出演できない、みたいなことも起きてしまう。その点、今回設立したラボでは多人数の同時配信ができますし、技術開発部門を持っているので、バーチャルタレントなのにチェキ撮影ができるようになったり、富士山の登山やドライブも一緒にできたりと、大きく可能性が広がっています。

ーー今回のラボ設立・技術開発を経て、実現させたいこととは?

渡邉:他のエンタメコンテンツやYouTubeに関しては、“コンテンツのリッチ化”が避けられないところまで来ていると思います。現在、YouTuberにはそういった“質”が求められる時代になったからこそ、近いうちにVTuberにもその流れは来ると確信し、ラボ兼スタジオを立ち上げました。

ーーバーチャルの業界に後発として参入するなかで、どのように差別化を図ろうとしているのでしょうか。

渡邉:技術やコンテンツへの投資についてはまだまだ深掘りできていないのが現状なので、まずはそこを見極めることから始めるつもりです。とはいえ、バーチャルYouTuber専用のスタジオ自体がまだそこまでないので、作った時点である程度の差別化はできているように思います。今後は企業さんでバーチャルYouTuberを作る際のお手伝いや、イベント開催時にこのラボから配信することもできるますし、実際に立ち上げを発表した際、20〜30社の企業さんからお問い合わせや見学の申し込みがあったので、そのニーズに応えていけば、自ずと差別化はできていくと思います。

ーースタジオを作る際に「この機能、この設備を軸にしよう」と思ったのは?

渡邉:「多人数でのコラボが配信できること」はすごく重要視しました。マーケットを大きくしていくという観点から見た時、それぞれが一人ひとり配信していくより、YouTuberのように大型のコラボをたくさん実施しながら配信していくほうがキャラクターが成長しやすいと思いました。同じように、バーチャルの世界でも多人数で配信できる環境は必要だと思い、MVN(慣性式モーションキャプチャ)を使って同時に7人まで配信できるように工夫しました。

ーーバーチャルYouTuberの事業を手がけるうえで、リアルなYouTuberの理論を持ち込めることもあれば、バーチャルにしかない特殊な部分もあると思います。これらの明確な違いを挙げるとすれば?

渡邉:YouTuberの方がバーチャルYouTuberよりもライトにマスに展開するコンテンツを提供できているのかなと思っています。だからこそ、収益構造も企業さんからのタイアップや広告収益が中心になっています。一方で、バーチャルYouTuberの場合は視聴者層もアニメ好きの方が多く、深く掘り下げる傾向があると思いますし、収益構造も投げ銭やグッズ物販、イベントなど、さまざまな形で収益を得ることができています。再生のボリュームはそんなに大きくないですが、一人当たりの熱量がめちゃくちゃ高いので、ここまでの盛り上がりを生むことができたのかもしれません。また、YouTuberの人たちは、基本的にサポートする・しないに関わらず、自立自走していることが前提という考え方があります。しかし、バーチャルYouTuberの場合はマネジメントや管理など、かなり手厚くやらなければいけない部分が大きいかもしれません。

ーーその違いは大きいですね。

渡邉:あと、感覚としてはライトなアニメに近かったりするのかなと思っています。バーチャルYouTuberの人たちって、アニメのキャラクターに近い感覚なのに、インタラクティブで身近な存在でもあるという、今までにない感覚をもたらしてくれます。今後はもしかすると、キャラクター・アニメビジネス自体の構造を変えていく存在になるのかもしれません。

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