ロシア当局がAppleを独禁法違反の疑いで調査 日本の公取委も動く
ロシアの公正取引委員会(FAS)がコンピューターセキュリティ会社のKaspersky Labs(モスクワ)の申し立てを受け、独占禁止法違反の疑いで、Appleの調査を正式に開始した。
AppStoreの優位を利用し、競合アプリを不正に排除か
Appleは2017年にAppStoreのポリシーを変更。その際にKaspersky Labs社は、これまで3年近く配信されてきたiOS用「Kaspersky Safe Kids」アプリについて、「設定プロファイルの使用がApp Storeポリシー違反」だとして削除を命じられた。
それが「アプリコントロールとSafariブラウザーのブロックができなくなる」という2つの重要な機能の削除だったことや、AppleがiOS 12のScreen Time機能を発表して間もなくのことだったため、同社が「Appleが支配的な地位を乱用した」と提訴していたものだ。
これを受け、『CNN』は8月8日「Appleが独禁法の圧力に直面している」と報じている(参考:https://www.cnet.com/news/apple-faces-an-antitrust-investigation-in-russia/)。
AppleとKasperskyの主張に食い違い
Appleはロシアの調査について「ユーザーのプライバシーとセキュリティを危険にさらしているため、最近いくつかのペアレントコントロール・アプリをAppStoreから削除した」と、疑惑について説明している。
これらのアプリのなかには、モバイル・デバイス・マネージメント(MDM)と呼ばれる非常に侵襲性が高いテクノロジーを使用しているものがあり、消費者向けアプリでの使用はAppStoreポリシーに違反していると強調する。しかしKaspersky Labsは、そのアプリでMDMを使用したことはないという(参考:https://www.patentlyapple.com/patently-apple/2019/08/russias-antitrust-service-has-reportedly-started-a-formal-investigation-into-apple-for-locking-out-kaspersky-lab-app.html)。
『9to5mac』は「Appleがまたしても独占禁止法調査、今回はロシア。この論争は、Appleがサードパーティのペアレンタルコントロール・アプリの取り締まりを開始した2018年に始まった。AppStoreから削除されたアプリやアップデートが拒否されたアプリもあり、2019年に入るとAppleのそのような問題は倍増した」と報じている(参考:https://9to5mac.com/2019/08/08/another-antitrust-investigation/)。
「Appleのアプローチは非現実的」iPodの父が指摘
Appleのワールドワイド・マーケティング担当シニアバイスプレジデントであるフィル・シラー氏は、今回の一件について、次のように述べる。
「これは競争の問題ではなく、セキュリティの問題です。Appleエコシステムではユーザーのプライバシーとセキュリティを保護することが最も重要であり、それを脅かす可能性のあるアプリを許容しないために、重要なAppStoreガイドラインがあります。保護者が子供たちのテクノロジーへのアクセスを管理できるように設計されたScreen Timeなどの機能を引き続き提供し、開発者と協力し、安全なテクノロジーを使用することで、多くの優れたアプリをAppStoreで提供します」
しかし、iPodの父といわれ、現在はGoogle陣営にいるトニー・ファデル氏は、Appleの提案するアプローチは非常に非現実的で、かわりにユーザーのプライバシーを保護するやり方で開発者に必要なデータを供給する公式APIを使用すべきだと述べる。ちなみに、Appleは、まだAPI使用という選択をしていない。