JUVENILE(OOPARTZ)×Toyotaka(Beat Buddy Boi)と考える、パフォーマンスを加速させるテクノロジーとは?

JUVENILE×Toyotaka『JIKKEN』対談

 HIPHOPエンターテイメント集団・Beat Buddy BoiのToyotakaが主宰をつとめ、クリエイティブファーム・THINK AND SENSEの技術協力を得て実現したライブイベント『JIKKEN』(6月25日・渋谷 Studio Freedom)。身体的パフォーマンスとテクノロジーが相乗効果を生み出し、その名の通り実験的でありながら、その場でしか味わえない貴重な体験を観客にもたらした。

 今回は同イベントについて、主宰であるToyotakaと、以前トークボックスについて語る記事に出演してもらったJUVENILE(OOPARTZ)による対談を行ない、イベント立ち上げの経緯や、パフォーマー視点の「エンタメ×テクノロジー」に対する考え方、JUVENILEが行なった“リアルタイム作曲”の裏側などについて、じっくりと話を聞いた。(編集部)

「『ライブで曲を作りたい』と僕も思っていた」(JUVENILE)

ーーまずは『JIKKEN』を立ち上げた経緯について聞かせてください。

Toyotaka:僕はもともと、15年間ダンサーとして活動していて。ダンスだけでライブをしたり、ラッパーが入ってダンスボーカルグループのような形になったりしてきたんですけど、その中で「日本には実力のある色んなパフォーマーがいるのに、こんなにも光が当たっていないのか」ということを思わされ続けてきたんです。今後はそういった人たちにスポットライトを当てられるような活動をしていきたいと思い、テクノロジーとパフォーマーを掛け合わせた『JIKKEN』を立ち上げました。

ーーパフォーマーに光が当たっていないというお話でしたが、ダンスに関してはここ10年くらいで良い方向に変わってきた面もあると思います。

Toyotaka:そうですね。スポーツ的な側面でも、エンタメのショーとしても取り上げていただくことは増えましたが、僕が思っているところには光が当たってないと感じていて。とはいえ、頑張れば頑張るほど一般に伝わらなかったりするものでもあるので、そこを解決するためにTHINK AND SENSEというテックチームの力を借りて『JIKKEN』を行なうことになったんです。

ーーTHINK AND SENSEと繋がったきっかけは?

Toyotaka:最初は大学のダンスサークルの先輩を介して「プロジェクションマッピングでダンスエンタメみたいなものを作れないか」と相談されて、社長の稲葉繁樹さんとお会いしたんです。話を聞いているうちに、プロジェクションマッピング以外にも様々な技術を持ってらっしゃって、それをフル活用できるんじゃないかと。

ーーパフォーマーとして色んなジャンルの表現者が参加したわけですが、その中でJUVENILEさんに声をかけた理由は?

Toyotaka:僕らの付き合いはお互い大学生のころからなので、相当長いんですよ。グループの楽曲を作っていただいてたり、ダンスバトルのDJとして回してもらったり、色んな現場で今まで戦ってきた仲間なんです。彼のトラックメイキングの制作過程もたくさん見てきたんですよ。「3時間で区切って曲を作りましょう」みたいなことをやっていると本人からも聞いていたので、「百戦錬磨のJUVENILEに生でトラックメイキングをしてもらおう!」とご飯に誘って、「色んなアイディアが欲しい」と話しながら、パフォーマンスの内容を決めていきました。

JUVENILE:「ライブで曲を作りたい」というのは僕も思っていたことなんですよ。そんなタイミングで声をかけてもらったので「渡りに船だ!」と思って、色んなアイデアを投げました。ライブで作る意味を考えたとき、一番面白いのはその場で録った声で曲を作ることかなと考えて、開演前のフロアでフィールドレコーディングして曲を作る、という形に決まったんです。

ーーマイクを持ったスタッフが、開演前のお客さんに声を入れてもらったりしていましたよね。曲をリアルタイムで作っても、それが本当に今作ったものなのか分かりづらいところがあると思うんですけど、声をその場で録って使うことで、よりリアルタイム感を味わえてよかったです。

JUVENILE:トラックメイキングをしている様子はYouTubeにも上がっていますが、動画だと全部編集されているじゃないですか。でも、今回は会場に入ったらフロアの真ん中でもう曲作りが始まっていて、パフォーマンス中もずっとPCを触っていて。ああいう形で作ってる時間を共有してもらうというのは、今まであんまりなかったと思うんです。

ーー僕も作曲のイベントやセミナーみたいなものに行くんですが、リアルタイム作曲といっても1回後ろに引っ込んだり、ワンコーラスだけだったりします。フロアの真ん中で曲を作り続けるのは異様な光景でした。

JUVENILE:めちゃめちゃジロジロ見られました(笑)。しかもヘッドフォンでモニターの音を出しているので、周りの人からすると、ただ鍵盤をカチャカチャやってるだけに見えていたかもしれません。

ーー絵面がすごい面白かったです。終わった後に「ギリギリだった」とお話しされていましたが、側から見ていると何がギリギリだったのかよくわからなかったんですよね。

JUVENILE:曲の構想はなんとなくあったんですけど、想定してなかったミックスが結構大変でしたね。ライブ中にスピーカーから出る外音をずっと聴いてたので、「この場で作った音源も負けないようなミックスにしないといけない」と思って。あとは、とにかくエラーやクラッシュを避けるためにサードパーティーのプラグインを使わないようにしていて。Cubaseにデフォルトで入っているものだけで、ギリギリまで、ああでもないこうでもないとミックスしてたんです。

ーー開演から出番まで1時間くらいでしたが、ミックス・バウンスする時間も含めてだったんですか?

JUVENILE:バウンスは時間がなかったのと、リアルタイムでもシンセを弾いていたこともあって、バッファを短いままでミックスしなきゃいけなかったですし、「X times(合図が出るまで繰り返す)」とか「ここだけ抜く」とかも本番ではありえると思ったんです。そのまま流したら、案の定X timesがありました(笑)。

Toyotaka:ありましたね。

JUVENILE:思ったよりZiNEZ a.k.a KAMIKAZEの時間が長くて、「ヤバイ、ヤバイ!」って言いながら調節していたんです(笑)。

ーーこちらからはわからなかったですが、そんな攻防があったんですね。

JUVENILE:そうなんです(笑)。でも、時間を縛って作るというのは、結構やっていることでもあって。家が近所のミュージシャンたちを集めて、そういう縛りで曲作りをするんですよ。スタジオミュージシャンって「はい、今フレーズを出してください」みたいな問答無用のシチュエーションが結構あるんですけど。若手でいきなりそんなシチュエーションは訪れないので、「いざという時のために遊びでトレーニングしようぜ」という感覚で招集しています。僕が鬼のように怖いクライアント役で、「はい、今出して。2回しか聴きません」みたいな(笑)。とはいえただの遊びではなくて、それがそのまま作品としてネットに上がるから、名前も出るし、責任も緊張感もある。そういうことを繰り返したからこそ、時間がない中で人に聴かせられるものを作ることには慣れていましたし、OOPARTZのライブではマニュピレーターみたいなことをやりながら鍵盤・トークボックスを演奏するという役割でもあるので、この2つを同時に走らせていました。

ーートラックメーカー・パフォーマー・マニピュレーターという3つの顔が同時に出たイベントでもあったと。

Toyotaka:そう考えると、マジですごいですね。

JUVENILE:まあ、そこは分かり合える人同士ですごいと思ってもらえればいいかもしれません。トークボックスも「あまり仰々しくしない」という僕の中での美学があって。涼しい顔をしながらステージに立って、だんだん「すごくないんじゃないか?」って思えるくらいがカッコいいなと。『JIKKEN』でも上西さんやZiNEZくんが涼しげな顔で鉄棒やフリースタイルバスケをやっているのがカッコよかったわけですし。

ーーすごすぎて頭が置いていかれたり、理解しようという感覚が遮断されて「すごい」という思いだけになる瞬間があるというか。

JUVENILE:テクノロジーって往往にしてそういう感覚を加速させてくれるところがありますよね。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる