『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』、なぜスーパーテクノロジーを“魔法”のように用いた?
悪いのは技術か、人間か
技術の発展は世の中に新たな混乱をもたらすが、結局のところそれを使うのは人である。トニー・スタークから受け継いだ技術を(高校生だから致し方ないが)無責任にも黒幕に渡してしまったピーター・パーカーは、「大いなる力には大いなる責任がともなう」ことを思い出し、黒幕に立ち向かう。本シリーズの一つのテーマである“力と責任”の関係について、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』は特殊なスーパーヒーローの力だけでなく、テクノロジーという側面からも捉えている。危険な技術とは、何もミサイルや精巧なホログラムなどといった特殊なものに限らない。我々の手元にあるスマホで不用意な動画を流せば、誰かの人生を崩壊させることもできる。
しかし、本作は技術に対して悲観的な態度ばかりを取っているわけではない。フラッシュの動画配信のおかげでスパイダーマンは敵の位置を捕捉できたし、なによりスパイダーマンがアイアンマンの残した技術を取り入れて、敵に立ち向かい、これを打倒する。
結局、最後は技術を使う人間の責任が問われるのだ。“力と責任”について考えなければならないのは、スーパーヒーローだけではない。スーパーテクノロジーを身近なものとして扱う我々もまた、それを問われているのだと、本作は突きつけたのだ。
■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。
■公開情報
『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』
全国公開中
監督:ジョン・ワッツ
脚本:クリス・マッケナ&エリック・ソマーズ
マーベル・コミック・ブック原作:スタン・リー、スティーヴ・ディッコ
製作:ケヴィン・ファイギ、エイミー・パスカル
出演:トム・ホランド、サミュエル・L・ジャクソン、ゼンデイヤ、コビー・スマルダーズ、ジョン・ファヴロー、J・B・スムーヴ、ジェイコブ・バタロン、マーティン・スター、マリサ・トメイ、ジェイク・ギレンホール
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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